ダンジョンズA 〔3〕嘆きの湖 (なげきのみずうみ)

17.リトライ(2)

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17.リトライ(2)

「そうか!」
(あおい)白鳥(はくちょう)二郎(じろう)が、はっと()づいた。
()ぶぞ。(つか)まれ、(あおい)!」
「ええっ!?」

ばさり ばさり……っ
ひときわ力強(ちからづよ)く、スワンが()ばたいた。
湖面(こめん)(すべ)っていく。

さらに(はや)くなった。
ばさりばさりばさりっ!
ふわり
(あおい)のお(なか)のあたりが、すうっとした。
視界(しかい)が、徐々(じょじょ)(うえ)へとずれていく。
()んでるんだ!

ぴゅるるるっ
フィルムが、(した)から(おそ)ってきた。
感動(かんどう)している(ひま)もない。
「うわっ」
(あおい)(さけ)んだ。だが、二郎(じろう)(なん)なく(かわ)す。

(あおい)は、湖面(こめん)見下(みお)ろして、納得(なっとく)した。
スワンが()ぼうと判断(はんだん)したわけだ。
あちこちから、セピア(いろ)のフィルムが()()ていた。まるで(きょ)(だい)(だこ)(あし)だ。

(みず)(なか)から(おそ)われたら、()えやしない。()んだ(ほう)が、まだ()けようがある」
()ばたきながら、筋肉(きんにく)二郎(じろう)説明(せつめい)する。

()たせたな!」
そこに、リーダーの力強(ちからづよ)(こえ)(ひび)いた。
(なな)(した)飛行(ひこう)している。
野太(のぶと)(あし)には、ずたぼろになったフィルムを棚引(たなび)かせていた。
(ちから)()くで()きちぎって、()()ったらしい。
さすがは、筋肉(きんにく)(もう)()だ。

(あおい)! ()げて!」
(あかつき)が、片手(かたて)()ばした。
バトンパス再開(さいかい)だ。

だが、レーザーポインターは、あまりにも(ちい)さい。
(あおい)は、なるべくペンの(はし)っこを()った。
()()()して、(あかつき)()のひらに()とそうとする。
かなり(こわ)体勢(たいせい)だ。
でも、やらなきゃ(かえ)れない……!

ぴゅるるるっ
まただ!
(あおい)は、(あわ)ててペンを()()めた。

セピア(いろ)のフィルムが、二羽(にわ)(あいだ)()くように(はな)たれた。これは(うで)なのか、(あし)なのか。
もう、どっちでも(おな)じだ。

(あおい)、しっかり(つか)まれ。(せん)(かい)する」
筋肉(きんにく)二郎(じろう)は、()()いた(こえ)で、はっきりと指示(しじ)をした。
歴戦(れきせん)(つわ)(もの)といった風格(ふうかく)だ。
(あつ)(たぎ)る1(ごう)とは対照的(たいしょうてき)に、あくまでも冷静(れいせい)な2(ごう)
マッチョ・スワンズのツートップは、(そろ)って綺麗(きれい)中空(ちゅうくう)をターンした。

完全(かんぜん)にマークされちまったな」
見下(みお)ろして、リーダーが(こぼ)す。
(なげ)きの(みずうみ)は、セピア(いろ)のフィルムに侵食(しんしょく)されていた。まずい。どんどん()えている。

(らち)()かない。
そう(おも)ったのは、みかげも(おな)じだったらしい。

うねうねしていたフィルムの(おび)が、突然(とつぜん)(うご)きを()わせた。
ぴゅるるるるっ!!!!!
一斉(いっせい)(おそ)()かってくる!

「いいっ?」
スワンズのリーダーですら、ひきつった。
物量(ぶつりょう)攻撃(こうげき)だ。
()()れない。(はた)()とされる!

(あかつき)! (あおい)!」
ばさり!
(よう)()せた筋肉(きんにく)三郎(さぶろう)だ。このコンビも()んできたのだ。

「うおお!」
(よう)が、気合(きあい)()めて(なに)かをぶん()げた。
びろんと()びたフィルムを、()(たお)していく。
ボウリングならば、ストライクだ。

「バーベルか!」
筋肉(きんにく)二郎(じろう)が、感嘆(かんたん)する。

その(とお)り。白鳥(はくちょう)(またが)った(よう)は、もう一本(いっぽん)、バーベルを()にしていた。
マッチョ・スワンズの()から、(ちい)さめの(もの)をチョイスしてきたのだ。
ただし、両端(りょうはし)のディスクは()らした。
でなきゃ、とうてい(あつか)えない重量(じゅうりょう)だったのだ。

俺達(おれたち)援護(えんご)する! バトンパスを(つづ)けろ!」
筋肉(きんにく)三郎(さぶろう)が、(だい)(おん)(じょう)()げた。

「ようし、もう一回(いっかい)だ。いくぞ!」
マッチョ・スワンズのリーダーが、(みんな)()(はな)つ。
()()!!!」
(あかつき)(あおい)筋肉(きんにく)二郎(じろう)(こえ)が、(そろ)った。

うおおぉぉ……
雄叫(おたけ)びが、(うえ)から()こえてくる。
(もも)は、はらはらしながら、(たたか)仲間(なかま)たちを見上(みあ)げていた。

ここは、メンテナンスモードの(とき)()れてきてもらった、マッチョ・スワンズの()だ。
大小(だいしょう)のバーベルが()(かさ)なって出来(でき)ている。
トレーニング道具(どうぐ)(イコール)住居(じゅうきょ)という、マッチョの(そう)(くつ)だ。

(もも)は、ここにいろ」
バーベルを(たずさ)えた(あに)は、そう()()いて、白鳥(はくちょう)()()っていった。

でも。(わたし)だけ、ここに(かく)れてて、いいのかな。
バトンパスには、自分(じぶん)(ふく)まれている。
全員(ぜんいん)()(わた)しに参加(さんか)しないと、みんな、現実(げんじつ)世界(せかい)には(かえ)れないのだ。

黒鳥(こくちょう)さん、あのね……」
(こえ)(ふる)えた。
でも、()わなくちゃ。

黒鳥(こくちょう)()は、筋肉四郎五郎(きんにくしろうごろう)マッスル()衛門(えもん)
(いか)つい名前(なまえ)(はん)して、マッチョ・スワンズ随一(ずいいち)(おだ)やかな筋肉(きんにく)野郎(やろう)だ。
うにょんと(くび)()げて、()せている(もも)()た。
(やさ)しい()だ。

(こわ)いけど、(わたし)も、あそこに()かなくちゃ。お(ねが)い。()んでもらえる?」
こくり
黒鳥(こくちょう)(うなず)いた。

ついーっ
黒鳥(こくちょう)は、(すべ)るように()()た。
()は、(みずうみ)(はし)っこだ。
みかげの手足(てあし)も、ここまでは()ていない。

(もも)大丈夫(だいじょうぶ)だよ。(かなら)ず、(ぼく)(まも)るから。しっかりと(つか)まっていて」
()、つぶっててもいい?」
()けている自信(じしん)はない。(ちい)さく、(もも)(たず)ねた。
「うん。いくよ」
(おだ)やかに、マッスル()衛門(えもん)(こた)えた。

だが、口調(くちょう)とは()(ぎゃく)に、(はげ)しく加速(かそく)した。
()(かた)(つぶ)った(もも)が、鞍上(あんじょう)(ちぢ)こまる。

ばさ ばさ ばさっっ!
黒鳥(こくちょう)()()がった。

上空(じょうくう)では、乱戦(らんせん)()(ひろ)げられていた。
(いま)だ、(あかつき)!」
()って、また()る!」
「まかせろ!」

もはや、(だれ)(こえ)だか()からない。
てんでんばらばらに(わめ)()う。

バーベルを()(まわ)して、ペラペラフィルムを退(しりぞ)けていた(よう)が、(こえ)()げた。
「しまった!」

ぴゅるるるるっ!
()(じた)フィルムが、バーベルを()(さら)った。
スペアは、もうない。
どうする? ()りに()りるか?

その(とき)。オネエな(こえ)()って(はい)った。
(よう)~。はい、ど・う・ぞ!」
マダム・チュウ(プラス)(スリー)(ナイ)()だ。
ド・ジョーが(あやつ)っているのだろう。(たか)(そび)えた水柱(すいちゅう)天辺(てっぺん)に、()()っている。
ピンクネズミは、軽々(かるがる)とバーベルを(かつ)いでいた。二本(にほん)もだ。

「あ、ありがとう」
さすがの(よう)も、どもった。
自分(じぶん)でも、かろうじて(あつか)える(おも)さのバーベルだ。それを、(ちい)さなネズミが、もじもじと()()している。

「いや~ん。お(れい)なんていいのよ、(よう)
オネエネズミは、くねくねと()(よじ)った。
一本(いっぽん)(よう)手渡(てわた)す。
すると、(した)からフィルムの攻撃音(こうげきおん)(ひび)いた。

ぴゅるるるるっ!
マダム・チュウ+999が、キッと(にら)みつけた。野太(のぶと)()(ごえ)が、オネエネズミの(のど)から(ほとばし)る。
「ゥオラァ!」

すぱーん
ネズミが(ほう)()げたバーベルが、フィルムを()こそぎ()(はら)った。
(よう)よりも()れのある(おと)()てて、瞬殺(しゅんさつ)する。

(あき)らかに、みかげが(ひる)んだ。
フィルムの手足(てあし)が、一瞬(いっしゅん)、すべて(かた)まる。

この()(のが)筋肉(きんにく)二郎(じろう)ではなかった。
(いま)だ、(あおい)(あかつき)にパスしろ」
()いながら、(あかつき)白鳥(はくちょう)急接近(きゅうせっきん)する。
(あかつき)、パス!」
(あおい)が、(うえ)から、(あかつき)目掛(めが)けて()っことした。
ペンが、(あかつき)()のひらでバウンドする。
だめか?
「っととと。大丈夫(だいじょうぶ)()()ったよ!」

ぐおおおお!
(ほう)(こう)が、湖中(みずうみじゅう)(ひび)(わた)った。
みかげが、(くや)(まぎ)れに(わめ)いているのだ。

(つぎ)は? (だれ)(わた)すんだっけ?」
(あかつき)が、(うえ)()んでいる(あおい)(たず)ねる。

(よう)(あおい)(あかつき)、ときたから。
(もも)ちゃんだ。いったん()りないと」
そう(こた)えた(あおい)は、(しん)じられない光景(こうけい)()にして、絶句(ぜっく)した。

黒鳥(こくちょう)だ。(もも)()っている。
こっちに()んで()る!

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