ダンジョンズA 〔4〕花束の宴 (はなたばのうたげ)

19.妬心・化身ソネムネ・タム(としん・けしんソネムネ・タム)(1)

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19.妬心としん化身けしんソネムネ・タム(1)

ロケット花火(はなび)()()けたのも同然(どうぜん)だった。
いや、それ以上(いじょう)だ。
着火(ちゃっか)同時(どうじ)発射(はっしゃ)(あかつき)は、猛然(もうぜん)(はし)()した。

だが、さすがにフルパワーは無理(むり)だった。
なにしろ、みかげに()()ばされて、さっきまで(たお)れていたのだ。

でも、なぜだろう。いきなりトウシューズを()()れた()がする。
ガニ(また)でのドタドタ(はし)りだが、それでも十分(じゅうぶん)(はや)い。

たった数秒(すうびょう)(あいだ)に、()(すべ)てを(とら)えられないほどの攻防(こうぼう)()(ひろ)げられた。

(あかつき)が、一直線(いっちょくせん)(とびら)()かう。
ひゅんっ
そこに、みかげだ。
こちらも、さっきド・ジョーに()()ばされたばかりなのに、驚異(きょうい)(ふっ)活力(かつりょく)だ。
(あかつき)進路(しんろ)()ちはだかる。

(たい)するド・ジョーも、ぼうっとしていたわけではなかった。
その(ぎゃく)だ。油断(ゆだん)なく、(つぎ)()仕掛(しか)けていた。

豪奢(ごうしゃ)控室(ひかえしつ)、フォワイエ・ド・ラ・ダンスには、無数(むすう)(みず)()(ひし)めいていた。
ド・ジョーが、(ほう)っておいたのだ。

それが、ぐるぐると室内(しつない)(およ)いでいる。
回遊魚(かいゆうぎょ)()れのように、きらきらと(かがや)きながら。
まぶしい。巨大(きょだい)なシャンデリアの(ひかり)が、さらに増幅(ぞうふく)されて室内(しつない)()ちている。

シャッ!
そのうちの一匹(いっぴき)が、下降(かこう)して(おそ)()かった。

みかげの(からだ)が、()()ばされる。
まさに、(あかつき)(とお)せんぼをする直前(ちょくぜん)だ。

(あかつき)(あし)()まらない。
いつの()にか、(よう)()いついて、(よこ)(はし)っている。
いい勝負(しょうぶ)だ。

ひゅんっ!
シャッ!

(またた)(あいだ)に、みかげが(もど)る。
そして、(かん)(ぱつ)(はい)れずに()ねのけられる。
両者(りょうしゃ)()にも(とど)まらぬ早業(はやわざ)だ。
それが、何回(なんかい)()(かえ)された。

(とびら)間近(まぢか)()かんだ水球(すいきゅう)(じょう)で、ド・ジョーは、冷静(れいせい)にみかげの(うご)きを見切(みき)っていた。

状況(じょうきょう)をみてから(はな)攻撃(こうげき)では、()()わない。
それならば、あらかじめ()待機(たいき)させておけばいいのだ。
(およ)がせている(なか)から、そのとき一番(いちばん)(ちか)(もの)を、ズドンだ。

ただし、威力(いりょく)()ちる。
(たん)に、(なが)れの()きを()えているだけに()ぎない。

だが、これで十分(じゅうぶん)だろう。
(あかつき)さえ()がしてしまえばいいのだ。

そして、こんな状況(じょうきょう)にもかかわらず、ド・ジョーは(おも)わず感心(かんしん)していた。

相変(あいか)わらず(あし)(はや)()だ。
「トウシューズを()いて100メートル(そう)」という種目(しゅもく)があったら、オリンピックで(きん)メダルが()れるに(ちが)いない。

チュチュ姿(すがた)(あかつき)とタキシードの(よう)が、こっちに()けて()る。あともう(すこ)しだ。

援軍(えんぐん)(とう)(ちゃく)していた。
突撃(とつげき)~!」
野太(のぶと)(こえ)が、フォワイエ・ド・ラ・ダンスに乱入(らんにゅう)した。
台詞(せりふ)(いさ)ましいが、口調(くちょう)がオネエだ。アンバランスにもほどがある。

マダム・チュウ+999だった。
マッチョ・スワンズの首輪(くびわ)()っている。
『1』の刻印(こくいん)、リーダーの筋肉(きんにく)一郎(いちろう)だ。

ばさっ ばさっ
巨大(きょだい)白鳥(はくちょう)が、『2』『3』と(つづ)いた。
なにしろ、でかい。(せば)まっていく(とびら)隙間(すきま)から、ぎりぎりで()()んだ。

(のう)味噌(みそ)まで筋肉(きんにく)変質(へんしつ)していそうな一家(いっか)だが、理性派(りせいは)もいる。筋肉(きんにく)二郎(じろう)だ。
ここまで、状況(じょうきょう)冷静(れいせい)にみていたのも、(かれ)だった。

ド・ジョーが、みかげを説得(せっとく)しようと(かた)()けている(あいだ)は、
「まだだ、()て」
と、(はや)仲間(なかま)()さえて、様子(ようす)(うかが)っていたのだ。

(とびら)(うご)いたと()るや。
(いま)だ!」
()くぞ!」
リーダーが、(かん)(ぱつ)(はい)れずに号令(ごうれい)をかけ。

シュワッ
マダム・チュウ+999が、ピンク(いろ)疾風(しっぷう)となって、首輪(くびわ)()()ってきた。

これ以上(いじょう)のタイミングはなかっただろう。

控室(ひかえしつ)への侵入(しんにゅう)成功(せいこう)した三羽(さんわ)突撃隊(とつげきたい)は、(あわ)てて高度(こうど)()げた。

部屋(へや)上空(じょうくう)には、(みず)()(ひし)めいている。
これでは、()(まわ)れない。

そこに、(あおい)(わめ)いた。
「こっち手伝(てつだ)って! (とびら)()まったら、おしまいだ!」

マッチョ・スワンズは、急旋回(きゅうせんかい)した。
ばしっ・ばしっ・ばしっ
(さん)連発(れんぱつ)で、(とびら)()()く。

加勢(かせい)するわ!」
ピンク(いろ)のネズミが、ちょろちょろ()りて()た。
(あおい)(あたま)(うえ)()つと、(とびら)()をかける。

(とびら)()まります。危険(きけん)ですので、(とびら)から(はな)れて(くだ)さい』
アナウンスが、警告(けいこく)(なが)(はじ)めた。

「せえのー!」
リーダーが、()(こえ)をかける。
筋肉(きんにく)~!」
(のこ)りが(こた)える。()()けるような()いの()である。

(うえ)から、白鳥(はくちょう)三羽(さんば)+ネズミ+(あおい)
合計(ごうけい)(なん)馬力(ばりき)だろう。
だが、(とびら)は、じりじりと()まっていく。

(なな)めになって()んばる(あおい)(あし)が、とうとう終点(しゅうてん)まで()(なが)された。反対側(はんたいがわ)(あお)(とびら)が、(かかと)()れる。

警告(けいこく)します。(とびら)から(はな)れて(くだ)さい』
(あおい)(うえ)では、三羽(さんわ)白鳥(はくちょう)も、それぞれ(とびら)(とびら)(あいだ)頑張(がんば)っている。
三本(さんぼん)筋肉製(きんにくせい)つっかえ(ぼう)だ。

(あかつき)(はや)く!」
(あおい)が、必死(ひっし)形相(ぎょうそう)(うなが)した。
(あかつき)(よう)は、もう()(はな)(さき)まで()ている。

安全(あんぜん)装置(そうち)作動(さどう)します。危険(きけん)ですので、(とびら)から(はな)れて(くだ)さい』
安全(あんぜん)装置(そうち)? じゃ、()まるか?
そう(おも)った(あおい)は、(あま)かった。

ビリビリビリ……
「うお!」「きゃあん!」「うわ!」

()には()えないものが、(とびら)(めん)(はし)った。
(たと)えるなら、(せい)電気(でんき)(はげ)しいやつだ。
全員(ぜんいん)、それをもろに()らった。

人間(にんげん)(からだ)は、そんなとき、反射的(はんしゃてき)()退()くようにできているらしい。
(あおい)は、悲鳴(ひめい)同時(どうじ)に、(とびら)から()(はな)していた。
白鳥(はくちょう)(たち)もだ。

どん・どん・どん!
スワンズは、そのまま落下(らっか)して()る。
恐怖(きょうふ)の、巨大(きょだい)だるま()としだ。

真下(ました)には、(あおい)がいる。
三羽(さんわ)下敷(したじ)きになったら……(つぶ)れた饅頭(まんじゅう)みたいに、ぺしゃんこだ。

(あおい)っ!」
ド・ジョーが、室内(しつない)から、(あわ)てて(みず)()(はな)った。

この(さい)文句(もんく)(あと)()こう。
シャッ!
水流(すいりゅう)が、問答(もんどう)無用(むよう)で、(あおい)(からだ)室外(しつがい)へと()()ばした。

どさどさどさ!
白鳥(はくちょう)が、(なか)よく墜落(ついらく)する。
間一髪(かんいっぱつ)だった。
()(かさ)なったスワンの()こうに、(たお)れこんだ(あおい)()える。

ほっと(いき)をつく()もなかった。
ド・ジョーの意識(いしき)()れたのは、この(あいだ)だけである。
それなのに、(すで)(かこ)まれていた。
やつらに。

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