ダンジョンズA 〔4〕花束の宴 (はなたばのうたげ)

20.シャワーキューブ(2)

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20.シャワーキューブ(2)

「え!?」
×3だ。()ども(たち)は、一様(いちよう)(おどろ)いた。

()れば、ド・ジョーだけではない、マダム・チュウ+999も、(しず)んだ(かお)をしている。
(せい)ぞろいしたマッチョ・スワンズもだ。

(もも)が、(すが)るような()住人(じゅうにん)(たち)見回(みまわ)した。
「だって、4(かい)エントリーできるんでしょ?」

すぐにその意味(いみ)理解(りかい)したのは、(あおい)だけだった。
やっぱり、こいつの理解力(りかいりょく)は、(あたま)(ひと)()()けている。
「そうか! みかげは、(まえ)にも花束(はなたば)(うたげ)にエントリーしたことがあるんだ!」

今回(こんかい)みたいに()(だま)使(つか)わないで、自分(じぶん)自身(じしん)挑戦(ちょうせん)した。
そして失敗(しっぱい)した。(いま)までに、2(かい)

「そうだ。その(あと)挑戦(ちょうせん)していない。(あきら)めたのか……。いつしかポアントも()くして、ただこの地宮(ちきゅう)(おとず)れては、(いたず)らに彷徨(さまよ)っていた」

そして、そんな胡蝶(こちょう)は、みかげだけではない。
(やま)ほどいるのだ。

「……じゃあ、さっきので3回目(かいめ)失敗(しっぱい)。もう(あと)がないってことか」
ド・ジョーが(あおい)(うなず)いた。

(よう)(かお)が、たちまち(くも)っていく。
(もも)(いた)っては、雨模様(あめもよう)気配(けはい)だ。(いま)にも()()しそうである。

「でも、()ってド・ジョー。それなら、エントリーを今日(きょう)するとも(かぎ)らないんじゃ?」
最後(さいご)のチャンスだ。
花束(はなたば)(うたげ)(もよお)される、(つぎ)機会(きかい)まで()って、万全(ばんぜん)()して(のぞ)むのではないか。

「いや。みかげには、もう時間(じかん)がない。そもそも、(うたげ)不定期(ふていき)だ。いつ開催(かいさい)になるか()からねえものを、()ったりはしないだろう」

足枷(あしかせ)は、もうそんなに(おお)きくなってたの?」
マダム・チュウ+999が、気遣(きづか)わし()(たず)ねる。
「ああ。こいつくらいになってた」
ド・ジョーは、()っている水球(すいきゅう)(むね)ビレで()(しめ)した。

う~ん
マッチョ・スワンズが(うな)る。
そりゃダメだ。絶望的(ぜつぼうてき)空気(くうき)()ちる。

「あの、かぼちゃか」
(よう)反応(はんのう)した。
みかげの足首(あしくび)に、(くく)()けられていた。
ハロウィンで()かけるような、(おお)きな(やつ)だ。

「そうだ。囚人(めしゅうど)足枷(あしかせ)は、どんどん(おお)きくなる。(そだ)ってしまうんだ」

「じゃあ、その()は? どうなるんだ?」
(よう)だって、みかげには(はら)()えている。
でも()かずにいられなかった。
もう時間(じかん)()い。その意味(いみ)って?

「……そうだな。()(ほう)(はえ)えだろう。時間(じかん)もあることだしな」

げえ
スワンズが、(そろ)って喉元(のどもと)(にぎ)りつぶされたような()(こえ)をあげた。

「おい……。あそこに()くのか?」
リーダーの筋肉(きんにく)一郎(いちろう)が、代表(だいひょう)して物申(ものもう)す。

「ああ。その(まえ)に、お(まえ)らもそこに(なら)べ。ついでに綺麗(きれい)にしてやる」
ド・ジョーは、ちろんと筋肉(きんにく)野郎(やろう)たちを見遣(みや)った。四羽(よんわ)(そろ)って、無駄(むだ)にでかい。

「いや! 俺達(おれたち)(とく)(よご)れていないから!」
大丈夫(だいじょうぶ)だ、と()わんばかりに、筋肉(きんにく)三郎(さぶろう)(くび)(よこ)()る。
うんうん
(のこ)りの三羽(さんわ)も、上下(じょうげ)(くび)()って同意(どうい)した。

汗臭(あせくせ)えんだよ!」
じゃっぱーんっ
問答(もんどう)無用(むよう)で、集中(しゅうちゅう)豪雨(ごうう)四羽(よんわ)()(そそ)いだ。

見事(みごと)局地的(きょくちてき)だ。(ほか)(もの)には、(しずく)ひとつかからない。
(ゆか)も、水浸(みずびた)しになることはなかった。
さすがはド・ジョーだ。
コントロールされた(みず)が、また四角(しかく)いシャワーキューブに(もど)る。

(あと)には、すっきりフレッシュに()まれ()わったスワンズが()っていた。
しっかりポーズまで()って、各々(おのおの)筋肉(きんにく)()()しまくっている。

やれやれ。
溜息(ためいき)をつきつつ、ド・ジョーは(もも)にも(こえ)をかけた。
(あら)っぽい応酬(おうしゅう)に、よほど(おどろ)いたのだろう。()()(まる)だ。

「じゃ、お(じょう)ちゃんで最後(さいご)だな。名前(なまえ)にちなんで、(もも)(かお)りはどうだ? 自然界(しぜんかい)にある(かお)りなら、なんでもできるぜ」
()って()わって、(やわ)らかく(すす)める。

(あつか)いが(まった)(ちが)う。
(あおい)(よう)は、(おも)わず失笑(しっしょう)した。

ド・ジョーは、やっぱり(やさ)しい。
そして、けっこう世話(せわ)()きなのだ。

(あおい)は、手首(てくび)のブレスレットを()た。
(かがや)きが(ちが)う。新品(しんぴん)同様(どうよう)になっていた。

ほら。これは(あおい)(いし)だよ。(りょく)碧玉(へきぎょく)というんだ。
父親(ちちおや)(こえ)(よみがえ)る。(ちい)さな手首(てくび)()めた、あの(とき)(かがや)き。そのままだ……。

「ありがと、ド・ジョー」
(あおい)が、(つぶや)くようにお(れい)()べた。

金色(きんいろ)のドジョウは、シャワーキューブに(はい)った(もも)洗浄中(せんじょうちゅう)だ。
今回(こんかい)は、(とく)念入(ねんい)りにヒゲを(うごめ)かしている。
ドレスは大変(たいへん)らしい。

「ん。あぁ」
ド・ジョーは、適当(てきとう)返事(へんじ)寄越(よこ)した。こっちを()(かえ)りもしない。
でも、その(かお)は、ちょっとだけ(ほころ)んでいた。

準備(じゅんび)万端(ばんたん)全員(ぜんいん)、リフレッシュ完了(かんりょう)だ。
ポータブルな案内板(あんないいた)は、また(あおい)胸元(むなもと)(かざ)られている。

よろず、出発点(しゅっぱつてん)巫女(みこ)(いずみ)だ。
そこまでは、スワンズも、よちよち(ある)いていくことになった。
マダム・チュウ+999は、横着(おうちゃく)して、(あおい)(かた)(うえ)
ド・ジョーの水球(すいきゅう)は、ふよふよと一行(いっこう)先頭(せんとう)()んでいく。

廊下(ろうか)()(あた)りの噴水(ふんすい)が、ピュティアの(いずみ)だ。

さっきと(おな)じだった。
()()がった(みず)が、(おど)巫女(みこ)身体(からだ)形作(かたちづく)っている。
衣装(いしょう)(みず)だ。(なが)(おび)は、(いきお)いよく両脇(りょうわき)階段(かいだん)(のぼ)っていた。

「ピュティア。墓場(はかば)まで()く。(おび)()ばしてくれ」
金色(きんいろ)のドジョウが、(たの)んだ。

その途端(とたん)

ばしゃばしゃ! ばしゃばしゃ!
(おど)りが激変(げきへん)した。
(みず)手足(てあし)が、すごい(いきお)いで(うご)きだす。
水面(すいめん)も、一気(いっき)波立(なみだ)った。

それまでは、(かみ)(ささ)げるに相応(ふさわ)しい(まい)だったのに。
ほとんど、()どもが癇癪(かんしゃく)(おこ)している様子(ようす)(ちか)い。

「あー」
住人(じゅうにん)たちが、(おな)(こえ)をあげた。
(かお)には、(おな)言葉(ことば)()かんでいる。
やっぱり。

()かっていないのは、()ども(たち)だけだ。
なに、これ?
唖然(あぜん)と、ピュティアを(なが)めている。

ド・ジョーが、苦笑(くしょう)まじりに解説(かいせつ)した。
「イヤイヤの(まい)、だ」 

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