カイコン

33.悔恨

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33.悔恨

「うおおおお~っ!!!」
馬車を引く馬の気分である。
力勝負だ。和尚は、腰から生えたシルキング縄を引っ張って飛んだ。

目指すは、蛟の、もう一方の頭。
矢が刺さっていた眉間に縄を縛り付けて、それから延々と体内を通してきたのだ。

お終いを、その始まりと結びつける。
そうすれば、蛟の「輪っか」の出来上がりだ。

だが、とんでもなく重かった。
巨体を無理やり曲げているのだから、無理もない。

宙に浮かんだ頭が、遥か先に見える。

「はあああ~っ!」
双子の気合が、ユニゾンで聞こえてくる。
蛟の胴を斬り付け、力を削いで、和尚の助力をする作戦なのだ。

こっちも苦戦していた。

万里のクサナギで斬られても、蛟の胴には切れ目一つ入らない。

「どれだけ固いんだよ!」

しかし、どす黒い鱗には、くっきりと銀色の線が刻まれていた。
まるで落書きだ。何本も増えていく。

キエエエエッ……

「大丈夫、攻撃は効いていますよ、万里坊ちゃま!」
軍服スーツから、フォースが励ました。

千里の方は、神剣ヤマツミに度肝を抜かれていた。

7つの刃先すべてから、いきなり透明な光が(ほとばし)ったのだ。
7本の光は、縒り合わさって、剣の先で一本になっている。

「なにこれ?!」
とんだライトセーバー状態だ。
でも、どうしようもない。そのまま斬った。

キエエエエッ……

生えている鱗が、さあっとヤマツミの刃先を避けた。
斬った直線の通りに、蛟の体が凹む。
逃げた鱗は、端っこに寄って、ぼこぼこと窮屈そうに蠢いている。

「え? こ、これでいいの?」
「大丈夫ですよ、坊ちゃん! 効いてます。さあ、続けて。ファイト!」
甘い爺やみたいなシルキング×2である。

一方。ちさとは、もう一つの蛟の頭と激しくやり合い続けていた。

伊達に戦い慣れていない。
確実に逃げつつ、チャンスを捉えては、きっちりと攻撃している。
さらに、冷静に状況を把握していた。

「もうすぐ、輪っかになるわね」
感嘆に値する、和尚の馬鹿力だ。
当初の作戦とは違ってしまったが、これでなんとかするしかない。

ニゴちゃんが、ライダースーツから呑気なことを言った。
「なんだか浮き輪みたいよね。小っちゃい子供の、輪っかに動物の首がくっ付いてるやつよ」

「あら、ほんと」
見下ろして、ちさとも同意した。
それならば、巨大すぎる浮き輪だ。もはや、川幅をはみ出している。

「じゃ、行こっか、ちさと」
「オーケイ」
すべて分かり合った相棒同士は、それだけで通じる。

ちさとは、いきなり加速した。
蛟の頭が追って来る。逃がすつもりはないらしい。

すごいスピードで、ちさとは輪の中に突進した。輪を潜り抜けると、外側から急上昇する。

蛟も、まんまと付いてきた。
頭を振りたくり、顎をガチガチと鳴らす。
噛みついて砕く気まんまんだ。

怯える様子も無く、ちさとはターンした。
再び輪の中に突進すると、今度は反対の位置に出る。
そして、また上昇した。

「かかった!」
ニゴちゃんが叫ぶ。

完璧に思惑通り。
大蛇の長い首は、浮き輪に絡みついていた。
無限大∞の記号に似た形になっている。

ここで戻させたら、一巻の終わりだ。

「今よ、和尚! ()めて!」
「無茶言うよなあ~」
それでも、和尚は死力を尽くしてシルキング縄を引っ張った。
ゼロちゃんもだ。(かみしも)に浮かんだ目が、ぎゅっと瞑る。

きゅうううっ……

巾着袋を締めるみたいに、大蛇の輪が絞られた。
これでは、もう、元気な方の首も動けない。

「今よ! カイコンを嵌めて!」
ちさとが、双子に向かって言い放った。

千里と万里が、動いた。
さすが双子、反応も同時だ。
猛スピードで、蛟の顔に近づいていく。

白金(プラチナ)の勾玉は、白いネコ耳から外れていた。
左手に持って、赤い蛟の目に翳す。
二人揃って左利きだ。

全ての動きが、完璧に同じだった。
そして、二人の声が、揃った。

「「カイコン!」」

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