ダンジョンズA 〔1〕ガルニエ宮 (がるにえきゅう)

4.電子案内板(デジタルサイネージ)(2)

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4.電子デジタル案内板サイネージ(2)

『ご用件(ようけん)をどうぞ』
レスポンスが(はや)い。画面(がめん)右下(みぎした)のキツネ(めん)が、(かん)(ぱつ)()れずに応答(おうとう)する。

(あおい)(つづ)けた。
今日(きょう)のイベントを(おし)えて」
しばらくの()
ぱっと、画面(がめん)にリストが(うつ)()された。
何件(なんけん)か、あった模様(もよう)だ。

キツネのお(めん)が、(くち)(ひら)いた。
本日(ほんじつ)のイベントは、(すべ)終了(しゅうりょう)(いた)しました』

「あれ? (たし)かに今日(きょう)って()いてあったんだけどな」
(あかつき)が、(となり)(くび)(ひね)った。
画面(がめん)のリストにも、掲載(けいさい)()い。

「バレエの予定(よてい)案内(あんない)して」
(あおい)が、質問(しつもん)()えた。
ぱっとリストが()()わる。
(けん)だけだ。
画面(がめん)表示(ひょうじ)するだけでなく、音声(おんせい)(なが)れた。

『トレーニングルームにて、オーロラバレエ教室(きょうしつ)のレッスンが開催(かいさい)されています。毎週(まいしゅう)木曜日(もくようび)午後(ごご)()からです』

「ああ。これと()間違(まちが)えたんじゃないの? (あかつき)
(あおい)が、()めた()()けてくる。
「ええー。(ちが)うよ。ちゃんと児童館(じどうかん)って()いてあったもん」
(あかつき)(なっ)(とく)できないらしい。

児童館(じどうかん)(なか)(はい)れたら、直接(ちょくせつ)()けるのにな」
()った(とき)には実行(じっこう)しているのが、(あかつき)である。

「ようこせんせーい! ()けて~。(あかつき)だよ~」
たっと(とびら)()()ると、大声(おおごえ)()びかけた。
そして、(とびら)のレバーを()げて、力任(ちからまか)せに()す。
ガン!
()いてみる。
ガン!

ああ、これやばいかな。
(はな)れた位置(いち)で、(あおい)冷静(れいせい)観察(かんさつ)した。
(とびら)上部(じょうぶ)には、監視(かんし)カメラと(おぼ)しき(もの)まで()いている。
このまままだと、(だれ)かが()ちゃいそうだ。
事実(じじつ)判明(はんめい)するだろうけど、確実(かくじつ)(おこ)られるだろうなあ。

(あおい)は、()(かえ)ると、画面(がめん)視線(しせん)(もど)した。
児童館(じどうかん)への入室(にゅうしつ)方法(ほうほう)、なんて、案内(あんない)してるわけないよね。

「ん?」
画面(がめん)()わっていた。

・・・文字(もじ)入力(にゅうりょく)画面(がめん)・・・
〔ご質問(しつもん)を、表示(ひょうじ)されているキーボードにタッチして入力(にゅうりょく)して(くだ)さい〕

(うす)いブルーの画面(がめん)下部(かぶ)には、アルファベットが(なら)んでいる。
中央(ちゅうおう)には、四角(しかく)いウインドウが(おお)きく表示(ひょうじ)されていた。

AUROR_

途中(とちゅう)まで入力(にゅうりょく)されているんだ。
カーソルが、(つぎ)()って点滅(てんめつ)していた。

よく()からない。
(とく)操作(そうさ)していないのに、いつの()()わったんだろう?

ガンガン ガンガン
(とびら)()けようとする(おと)が、(にぎ)やかに()こえてくる。

(あおい)(ゆび)が、(ふか)(かんが)えずに画面(がめん)()れた。
キーボードの、一番(いちばん)先頭(せんとう)のアルファベットだ。



『エイ』
ぱっと、画面(がめん)右下(みぎした)に、キツネのお(めん)()()た。
(くち)だけが(うご)く。
さらに、最初(さいしょ)から()()げた。
キツネのくせに、アナウンサーばりの完璧(かんぺき)発音(はつおん)だ。

『エイ ユー アール オー アール エイ』
そして()った。

『オーロラ』

その直後(ちょくご)
カッ
画面(がめん)全体(ぜんたい)が、青白(あおじろ)()りつぶされた。
(まぶ)しい。
まさか(こわ)れた?
(あおい)(いき)()む。

「ちょっと(あかつき)! ()て!」
(あおい)が、たまらずに()んだ。
すぐ()る。
「なに?」
(あおい)が、無言(むごん)画面(がめん)(ゆび)さす。

そこに(うつ)っていたのは、(しろ)(ねこ)だった。

「あれ? しろさん?」
(あかつき)()(とお)りだった。

だが、(ちが)う。
青白(あおじろ)背景(はいけい)()かんだ「しろさん」は、ぱっちりと両目(りょうめ)()けていた。
そして、きょろきょろと(うご)いている。

(おも)わず同時(どうじ)に、二人(ふたり)とも右向(みぎむ)(みぎ)した。
(しろ)(ねこ)()いぐるみは、()わらず(とびら)にいた。
だが。

片目(かため)つぶってた……よね……」
(あかつき)が、呆然(ぼうぜん)(つぶや)く。
(あおい)も、無言(むごん)(うなず)いた。

()間違(まちが)いではない。
どうしてだ。
本物(ほんもの)のしろさんまで、両目(りょうめ)()いている。
そして。画面(がめん)(おな)じく、きょろきょろと(かお)(うご)かしている!
まるで、()きているみたいに。

二人(ふたり)は、(いき)をのんだ。
しろさんが、こっちを()た。
()()った。

ぴたり
しろさんが()まった。(つぎ)瞬間(しゅんかん)
(しろ)(ねこ)は、(するど)()いた。
「ニャー!!」

同時(どうじ)に、()いぐるみが、()()がった。
フックから、(からだ)(はず)れる。

ひらり
(ちゅう)()った(しろ)(ねこ)のバレリーナは、しゅたっと着地(ちゃくち)した。
(とびら)(めん)に、(からだ)()()すような恰好(かっこう)()ったのだ。

それから、(よこ)()きのまま、独楽(こま)のように(いきお)いよく回転(かいてん)(はじ)めた。

ぐるぐる ぐるぐる……
(はや)い。
どんどん(はや)くなる。

ぐるぐる ぐるぐる……
もはや、(しろ)いドリルが(かべ)穿(うが)っているみたいに()える。

(あかつき)(あおい)も、ただ()見張(みは)っていた。
驚愕(きょうがく)(こえ)()ない。

いつのまにか、しろさんの姿(すがた)は、()くなっていた。
()わりに、そこにあったのは……。
(しろ)いドアノブだ。

(あかつき)(あおい)は、無言(むごん)で、お(たが)いの(かお)()た。
(おな)じように「(しん)じられない」と()いてある。

頑丈(がんじょう)(とびら)には、右端(みぎはし)に、ナンバーキー()きのレバーノブが()いている。
その左端(ひだりはし)に、もう(ひと)つ。
こっちは、つやつやした陶器(とうき)白地(しろじ)に、金色(きんいろ)彩色(さいしょく)(ほどこ)されている。優雅(ゆうが)なデザインの、(まる)いドアノブだ。

異様(いよう)光景(こうけい)だった。
一枚(いちまい)(とびら)に、(ふた)つもドアノブが(なら)んでしまっているのだ。

「……いやいやいや。(あき)らかに(あや)しいだろう。だめだめ、絶対(ぜったい)にだめ。ホイホイ()けちゃいけないやつだって、これ」
(あおい)は、自分(じぶん)()()かすように、小声(こごえ)でブツブツ(つぶや)いた。

その(こえ)が、いきなり裏返(うらがえ)った。
「って、(あかつき)?!」
(よこ)で、あっさりと(あかつき)がドアノブに()をかけていた。(しろ)(ほう)にだ。

ノブを(まわ)す。
(とびら)()す。
(うご)いた。()く!
まったく(まよ)いがない。()める()もなかった。

「うわぁ……!」
歓声(かんせい)()げて、(あかつき)は、そのまま(なか)(はし)りこんでいった。

「ちょっと()って!」
その()を、(あわ)てて(あおい)()っかけた。

キィィ……パタン
二人(ふたり)(はい)った(とびら)が、ゆっくりと()まった。

(しろ)いドアノブは、もう()えていた。
その場所(ばしょ)で、(しろ)(ねこ)がウインクしていた。

間仕切り線

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