ダンジョンズA 〔4〕花束の宴 (はなたばのうたげ)

9.大階段(だいかいだん)(2)

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9.大階段だいかいだん(2)

(あおい)(よこ)に、黄金色(こがねいろ)(うき)(ふね)()まっていた。
空車(くうしゃ)だ。いや、(くう)(ふね)だ。
ピエロの仮面(かめん)は、(はしら)天辺(てっぺん)で、()人側(にんがわ)(かお)()けて()まっている。

「ああ! これが案内板(あんないばん)なんだ!」
(あおい)()(てん)した。さすがだ。理解(りかい)(はや)い。

「あ、そっか!」
(よう)(もも)(こえ)が、(そろ)った。
それを()いて、ようやく得心(とくしん)している。

「ほら、(あおい)()って、()って」
(もも)(かた)()ったマダム・チュウ+999が、遠慮(えんりょ)なく()かした。

()れったって……。
おっかなびっくり、(あおい)(みず)()かんでいる(いた)(あし)()けた。

乗車(じょうしゃ)スペースは、そんなに(ひろ)くない。写生(しゃせい)大会(たいかい)使(つか)う、画板(がばん)くらいだ。
よく()れば、二層(にそう)構造(こうぞう)だった。分厚(ぶあつ)(だい)(うえ)に、(うす)めの(いた)()っている。
よく、こんなところで(おど)れるな。

うにょん
両足(りょうあし)(だい)()けた途端(とたん)、お(めん)(うご)いた。
裏返(うらがえ)ると、ぴったりと(あおい)(かお)(おお)(かぶ)さる。

「うわ!」
(なに)()えない。
「ちょ、ちょっと! これ、どうすればいいの?」
()()ろうとしても、お(めん)はどこまでも()いてくる。無駄(むだ)高性能(こうせいのう)だ。

()(はん)して愉快(ゆかい)なダンスをしている(あおい)(たす)けるべく、ピンクネズミが素早(すばや)(うご)いた。
(もも)から(よう)()(うつ)り、筋肉(きんにく)二郎(じろう)一郎(いちろう)順番(じゅんばん)足蹴(あしげ)にする。
白鳥(はくちょう)(たち)悲鳴(ひめい)()げたが、おかまいなしだ。
しゅたっと、(あおい)(かた)着地(ちゃくち)する。

マダム・チュウ+999は、ロデオみたいに()(まわ)されながらも、(あおい)耳打(みみう)ちした。

(とな)えるのよ、(あおい)
そうか。これは案内板(あんないばん)だった。

(あおい)は、理解(りかい)した瞬間(しゅんかん)言葉(ことば)(つむ)いでいた。

「カモン、サイネージ」

ぴたり
うにょうにょした(うご)きが、たちまち()まった。

かっ
(ひかり)が、お(めん)()から(ほとばし)る。いつもと(おな)じ、青白(あおじろ)(ひかり)だ。
だが、今回(こんかい)は、あまり(まぶ)しくない。

両目(りょうめ)から(ひかり)(はな)ちながら、お(めん)(もと)位置(いち)(もど)った。
()っている(あおい)に、(かお)()けて()まる。
()から(ひかり)()えた。音声(おんせい)(なが)れる。
『ご案内(あんない)(いた)します。ご用件(ようけん)をどうぞ』

はー……
スワンズの(うえ)から、はらはら見守(みまも)っていた(よう)(もも)が、そろって安堵(あんど)溜息(ためいき)をついた。

(あおい)も、(いき)()()した。ようやく、ちゃんと()てた。

なんだか、(ぼう)人間(にんげん)みたいだな。
黄金(おうごん)(はしら)が、胴体(どうたい)()える。
(めん)(かお)は、(すこ)(なな)めに()いていた。
見上(みあ)げられている(かん)じだ。

マダム・チュウ+999が、(みだ)れた(あおい)(かみ)を、ちょいちょいと(なお)してあげていた。
甲斐(かい)甲斐(がい)しい。
だが、(あおい)気付(きづ)かずに、口早(くちばや)()いかけた。

花束(はなたば)(うたげ)案内(あんない)して()しい。ボックス(せき)はどこ?」

演目(えんもく)出演者(しゅつえんしゃ)により(こと)なります。今宵(こよい)は、5作品(さくひん)上演(じょうえん)されます。ジゼル、コッペリア、リーズの結婚(けっこん)、くるみ()人形(にんぎょう)(ねむ)りの(もり)美女(びじょ)です』

(こま)った。どれに()るかなんて、()からない。

加羅(から)みかげ、だ」
至近(しきん)距離(きょり)で、(よう)(こえ)がした。

(あおい)(よこ)()いた。
いつのまにか、白鳥(はくちょう)から()りて()たらしい。
(よう)は、(みず)(なが)れていない場所(ばしょ)()っていた。
だが、ズボンの(すそ)()れている。
どこかで、(なが)れに()()んだのだろう。

『エントリーを確認(かくにん)できました。ジゼルに出演(しゅつえん)します。』

よし。
(あおい)(よう)は、(うなず)()った。
「じゃあ、案内(あんない)して。(よう)()って」
(かろ)やかに、(よう)(いた)()()った。

その途端(とたん)

ブー
残念(ざんねん)(おと)()(ひび)く。
重量(じゅうりょう)オーバーです。()りて(くだ)さい』

あっちゃあ
二人(ふたり)で、()見合(みあ)わせる。駄目(だめ)だ。

「もう一台(いちだい)()てるわよん。(よう)は、あっちに()ったら?」
マダム・チュウ+999が、()(しめ)した。

本当(ほんとう)だ。どこからともなく、(うき)(ふね)(とう)(ちゃく)していた。
どうやら、(ゆか)(ひと)()っているのを感知(かんち)して、(むか)えに()るらしい。

「いや、いいよ。(おれ)三郎(さぶろう)()っていく。(あおい)先導(せんどう)してくれ。(おれ)たちは、(あと)()いていくから。それでいいかなあ、一郎(いちろう)さん?」
押忍(オス)!」
OKだ。

(よう)()(もど)った。
途中(とちゅう)で、また、じゃぶんと(みず)(おび)()()んだが、()にもかけない。

首輪(くびわ)(くら)()()けて、ひょいっと騎乗(きじょう)した。
(あおい)にはできない芸当(げいとう)だ。

直行(ちょっこう)して、よろしいですか?』
「ああ。出発(しゅっぱつ)してくれ」
(あおい)(たの)んだ途端(とたん)(うき)(ふね)(うご)()した。

「うわ!」
(あおい)が、(おも)わず、お(めん)(はし)っこを(つか)んだ。

『そこに(つか)まらないで(くだ)さい。()助手(じょて)すりを()しますか?』
「なんか()かんないけど、それお(ねが)い」

ういーん
(はしら)両脇(りょうわき)から、()っかが()てきた。
まるで、ハニワの(うで)だ。
いよいよ(ぼう)人間(にんげん)様相(ようそう)(てい)してきた。

(あおい)が、(あわ)てて両手(りょうて)(つか)まる。

『ロージュまで、ご案内(あんない)(いた)します』
相変(あいか)わらず、アナウンサーみたいな美声(びせい)だ。

黄金(おうごん)(うき)(ふね)は、大階段(だいかいだん)()かった。
ういーん
乗客(じょうきゃく)がそっくり(かえ)らないように、足場(あしば)(いた)傾斜(けいしゃ)がかかる。
(はしら)(なが)さと()きも、(すみ)やかに調整(ちょうせい)された。

なるほど。これなら、無理(むり)なく()っていられそうだ。まあ、(おど)るのは無理(むり)だけど。

(うき)(ふね)は、(うえ)()かう水流(すいりゅう)()っかった。
右側(みぎがわ)は、(くだ)りだ。すれ違う胡蝶(こちょう)たちは、お(まつ)(さわ)続行中(ぞっこうちゅう)である。

案内板(あんないばん)()った(あおい)
(つづ)いて、(よう)()せた白鳥(はくちょう)筋肉(きんにく)三郎(さぶろう)
黒鳥(こくちょう)(もも)
二郎(じろう)が、その(うし)ろに()き、殿(しんがり)はリーダーの一郎(いちろう)になった。

マッチョスワンズは、一列(いちれつ)(のぼ)って()く。

「はぁ……。フォーマルも素敵(すてき)なんだけどねえ」
マダム・チュウ+(プラス)999(スリーナイン)が、(あおい)(かた)(うえ)溜息(ためいき)をついた。
タキシードの(くろ)生地(きじ)に、ちょこん、と(すわ)っている。

「なに?」
「パーカーのほうが、居心地(いごこち)がいいわあ」
前回(ぜんかい)前々回(ぜんぜんかい)と、(あおい)のフードはネズミの()()していた。
相当(そうとう)()()っていたらしい。

(あおい)(くちびる)が、(すこ)()(えが)いた。
「そいつはご愁傷(しゅうしょう)さま」
「やだ! (あおい)ったら。そんな()(がた)、いつ(なら)ったの? (かた)ゆで(たまご)野郎(やろう)、そっくりよ。あんなの真似(まね)しちゃ駄目(だめ)

ぎゃあぎゃあ
先頭(せんとう)()(ひろ)げられる喧騒(けんそう)見遣(みや)って、黒鳥(こくちょう)(もも)微笑(ほほえ)みかけた。
(なか)がいいね」

「そうかな……?」
(もも)が、小首(こくび)(かし)げた。

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