カイコン(総フリガナ版)

15.チーム千里(総フリガナ版)

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15.チーム千里せんり

銀色(ぎんいろ)ヤタガラスは、三人(さんにん)の印鑑(いんかん)をもらうと、さっさと飛(と)び立(た)った。

「不思議(ふしぎ)なもんだ。ヤタガラスって、採掘(さいくつ)すると必(かなら)ず嗅(か)ぎつけて来(く)るよな」
見送(みおく)りつつ、和尚(おしょう)が零(こぼ)す。

ちさとが頷(うなず)いた。
「そうね。三本(さんぼん)足(あし)のカラスなんて、普段(ふだん)は全然(ぜんぜん)見(み)かけないのに」

「あ、でもチップが一枚(いちまい)しか出(で)なかった時(とき)は、さすがに来(こ)なかったことがあったな」
苦笑(にがわら)いする和尚(おしょう)である。
駆(か)け出(だ)しの頃(ころ)だ。あれは大外(おおはず)れだった。

「あ、オレもある」
にこっと千里(せんり)が笑(わら)った。

ふ~ん。わりと人懐(ひとなつ)っこい感(かん)じだ。
「一人(ひとり)がいい」とか言(い)ってたけど、カッコつけたいお年頃(としごろ)なんだろうな。

自分(じぶん)も身(み)に覚(おぼ)えがあるだけに、和尚(おしょう)は苦笑(にがわら)いを浮(う)かべた。

それにしても、これまでの採掘(さいくつ)現場(げんば)で、同業者(どうぎょうしゃ)と鉢合(はちあ)わせしたのは初(はじ)めてだった。
ネコ耳(みみ)自体(じたい)が少(すく)ないし、その中(なか)で採掘師(さいくつし)をやっている者(もの)は一(ひと)握(にぎ)りだ。

その絶対数(ぜったいすう)が少(すく)ない中(なか)、たまたま巡(めぐ)り合(あ)った仲間(なかま)が、なんでこんなに顔(かお)がいいんだろう。
しかも二人(ふたり)揃(そろ)って。

ま、どうでもいいか。
あっさりと和尚(おしょう)は考(かんが)えるのを止(や)めた。
二人(ふたり)とも、腕(うで)は立(た)ちそうだ。

「ちょうど良(よ)かったぜ。でかい山(やま)に心当(こころあ)たりがあるんだ。さっそく一緒(いっしょ)にやらないか?」

ちさとが驚(おどろ)きを隠(かく)さずに尋(たず)ねた。
「ってことは、一人(ひとり)でやるには心(こころ)もとないくらい、大(おお)きな山(やま)なのね」

一人(ひとり)でやれそうだったら、声(こえ)はかけないだろう。報酬(ほうしゅう)を独(ひと)り占(じ)めできたほうがいいに決(き)まっている。

「すごいわね。今回(こんかい)も大(おお)きかったし、よっぽど探知(たんち)に長(た)けているのね、あなたの相棒(あいぼう)さんは」

美女(びじょ)に褒(ほ)められて、和尚(おしょう)とシルキング0号機(ごうき)がハモった。

「他(ほか)は、からきしだけどな!」
「他(ほか)は、からきしですけど!」
あっはっは
両者(りょうしゃ)ともに開(あ)けっぴろげな性格(せいかく)のようだ。

「で、これから行(い)ってみないか? 実際(じっさい)に、自分(じぶん)達(たち)でも探知(たんち)した方(ほう)が納(なっ)得(とく)できるだろ」

美女(びじょ)と美(び)少年(しょうねん)は、顔(かお)を見合(みあ)わせた。
強引(ごういん)そうに見(み)えて、ちゃんと段階(だんかい)を踏(ふ)んでくる男(おとこ)だ。世慣(よな)れているのだろう。

二人(ふたり)は、それぞれ同(おな)じ評価(ひょうか)を下(くだ)した。
信用(しんよう)できそうだ。
時代(じだい)遅(おく)れの裃(かみしも)姿(すがた)は、ちょっと頂(いただ)けないけど。

彼(かれ)らが頷(うなず)いたのを見(み)て、和尚(おしょう)は拳(こぶし)を手(て)の平(ひら)に打(う)ち付(つ)けた。よっしゃ、第一(だいいち)関門(かんもん)突破(とっぱ)だ。

「電車(でんしゃ)で行(い)ける距離(きょり)なんだ。飛(と)んでった方(ほう)が早(はや)いんだが、まだ大丈夫(だいじょうぶ)か?」
シルキングを身(み)に付(つ)けたネコ耳(みみ)は、飛(と)ぶことができる。だが、相当(そうとう)疲(つか)れるのだ。

「オレは平気(へいき)だけど。えっと、お姉(ねえ)さんは?」
「ちさと、でいいわよ。私(わたし)も大丈夫(だいじょうぶ)。体力(たいりょく)はあるの。研修中(けんしゅうちゅう)ずっと、研究所(けんきゅうじょ)の敷地(しきち)をマラソンして鍛(きた)えたのよ」

「すげえ! あそこ、べらぼうに広(ひろ)いよなあ。俺(おれ)も走(はし)ってたけど、嫌(いや)になったぜ」
感心(かんしん)している和尚(おしょう)からして、一番(いちばん)体力(たいりょく)を使(つか)っている筈(はず)だが、けろりとしている。

そうか。普通(ふつう)は鍛(きた)える必要(ひつよう)があるのか。
そんな話(はなし)は、聞(き)いていない。
二人(ふたり)の様子(ようす)を見(み)て、少年(しょうねん)の声(こえ)が小(ちい)さくなった。
「えっと、オレのシルキングは4号機(ごうき)だから、あまり体(からだ)に負担(ふたん)が掛(か)からなくて……」

「4号機(ごうき)?!」
和尚(おしょう)とちさとが、目(め)を剥(む)いた。
二人(ふたり)の服(ふく)まで、一緒(いっしょ)に叫(さけ)んでいる。

「そんなのあるの? 最新式(さいしんしき)よね」
「いくらすんだよ。俺(おれ)なんて0号機(ごうき)だぜ」

「0号機(ごうき)?!」
今度(こんど)は、ちさと&千里(せんり)の合唱(がっしょう)だ。

「やだ~。なんかボクだけ平凡(へいぼん)でゴメンね~、ちさと」
美女(びじょ)のジャンプスーツが、青年(せいねん)の声(こえ)で謝(あやま)った。どう聞(き)いても女(おんな)言葉(ことば)だ。
全然(ぜんぜん)、平凡(へいぼん)じゃない。

「いいのよ、私(わたし)はニゴちゃんが気(き)に入(い)ってるんだから。あ、この子(こ)は2号機(ごうき)よ」
「よろしくね~」
フレンドリーに挨拶(あいさつ)されてしまって、男(おとこ)二人(ふたり)は引(ひ)き気(ぎ)味(み)に応(こた)えた。
「「ど、どうも」」

それにしても、ばっちりのコーディネートだ。
スタイル抜群(ばつぐん)の美女(びじょ)を、完璧(かんぺき)に引(ひ)き立(た)てている。センスが第一級(だいいっきゅう)なのは、間違(まちが)いない。

「おおっと、ま~た野次(やじ)馬(うま)が集(あつ)まり出(だ)しちまった」
和尚(おしょう)が舌打(したう)ちした。

今日(きょう)は日曜日(にちようび)だったっけ。
その昼(ひる)日中(ひなか)に、いつまでも路地(ろじ)で騒(さわ)いでいたのがいけなかった。
究極(きゅうきょく)の自由業(じゆうぎょう)に鞍替(くらが)えしてからこっち、曜日(ようび)の感覚(かんかく)が磨(ま)滅(めつ)している。

「んじゃ、行(い)きますか」
たんっと地(ち)を蹴(け)った。
ネコ耳(みみ)達(たち)が、次々(つぎつぎ)、ふわりと宙(ちゅう)に浮(う)く。

どよっと、眼下(がんか)の人々(ひとびと)が騒(ざわ)めいた。
「おい、飛(と)んだぞ!」
「何(なん)なんだ、あいつら」

きれぎれに聞(き)こえてくる。
和尚(おしょう)の頬(ほほ)に、皮肉(ひにく)っぽい笑(え)みが浮(う)かんだ。
「ネコ耳(みみ)だよ」

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