ダンジョンズA 〔2〕双子の宮殿 (ふたごのきゅうでん)

18.カウントダウン(2)

当サイトは広告を利用しています プライバシーポリシー   

18.カウントダウン(2)

0は? 0が()こえてこない。

はっと、(あかつき)()(ひら)いた。
まぶしくない。
ほぼ同時(どうじ)に、(よう)()()いた。
(かお)()げる。ここは……?

(つな)がった自分(じぶん)(たち)(からだ)は、(いま)(すべ)()ちている。
ただし、()って()わって、ゆっくりとだ。
先頭(せんとう)(あおい)だけは、まだ、ぎゅうっと()をつぶっている。

「わあああっ」
(さけ)(ごえ)も、継続中(けいぞくちゅう)だ。

「わあ……あ?」
ん? なんだか、おかしい。

シュー
三人(さんにん)人間(にんげん)(れん)(けつ)(ぞり)が、ようやく()まった。

「……ねえ、(あおい)()いたよ」
(あかつき)(こえ)が、()こえる。
()いたって?

(あおい)も、(おそ)(おそ)()(ひら)いた。
(うし)ろから、(あかつき)(のぞ)()んでいる。

いつの()にか、(した)(たい)らになっていた。
ふんわりとした感触(かんしょく)がする。
()れば、カラフルなマットレスだった。
いろんな(いろ)(せい)(ほう)(けい)がジョイントされて、一面(いちめん)()()められている。

どっかで()たな、これ……。
まてよ。(あか)一色(いっしょく)じゃない。ってことは。
「シューターじゃない!?」

がばっと、(あおい)(かお)()げた。
()(かえ)る。

(すべ)(だい)があった。
ジャングルジムに、(ゆる)やかな(すべ)(いた)()いている。
(こし)ほどの(たか)さしかない、幼児(ようじ)()けの遊具(ゆうぐ)だ。

呆然(ぼうぜん)とした(かお)で、(あおい)(つぶや)いた。
「プレイコーナーだ……」

西(にし)センターのエントランスホールにある、幼児(ようじ)()けコーナーだ。間違(まちが)いない。
(もど)って()れたんだ。

ピッ ピッ ピッ
ポォーン!

(とき)()かず、時報(じほう)(おと)が、(しず)かなホールに(ひび)(わた)った。
17:00
(かべ)大画面(だいがめん)に、正時(しょうじ)()らせるアニメーションが(うつ)()される。

「……また5()だね、(あおい)
(うし)ろにくっ()いている(あかつき)が、前回(ぜんかい)()(かん)(おも)()こさせた。

そうだ。まったく(おな)()(こく)だ。

「どういうことだ?」
そのまた(うし)ろの(よう)が、(たず)ねてくる。
なんで、まだ5()なんだ?
そう、(かお)()いてある。無理(むり)もない。

(すこ)しづつ、(あおい)()()いてきた。
「ええと。あっちの世界(せかい)にいた(ぶん)は、たぶん時間(じかん)()っていないんだよ」

16:30に、空手(からて)教室(きょうしつ)終了(しゅうりょう)
それから、螺旋(らせん)階段(かいだん)延々(えんえん)(くだ)り、その()てにオーロラの地宮(ちきゅう)へと(いざな)われた。
そこまでが、おそらく30(ぷん)くらいだ。

東西(とうざい)宮殿(きゅうでん)()(ひろ)げられた、素材(そざい)(さが)しにチュチュ(づく)りまで()れたら、5()(かえ)れるわけがない。

先頭(せんとう)(あおい)順々(じゅんじゅん)()くと、(よう)(なっ)(とく)した。
「なるほど。まあ、とにかく無事(ぶじ)(かえ)れてよかったなあ」

正直(しょうじき)時間(じかん)なんて、どうだっていい。
(よう)は、()()れと微笑(ほほえ)むと、二人(ふたり)(まも)っていた(うで)をようやく()いた。

「あ、そっか。もういいんだっけ」
やっと、(あかつき)()づいた。
自分(じぶん)(たち)ときたら、ずらずら連結(れんけつ)した(かっ)(こう)のまま、マットに(すわ)()んで(はな)していたのだ。
(すべ)(いた)(ちょっ)()普通(ふつう)なら(だい)(じゅう)(たい)()()こす場所(ばしょ)だ。

でも、(さいわ)い、(ほか)()(よう)(きゃく)はいなかった。
エントランスホールも、がらがらだ。

()ども(まつ)り、()わったらしいな」
(すわ)ったまま、(あた)りを()(わた)して、(あおい)(つぶや)いた。
制服(せいふく)()(けい)()(いん)が、一人(ひとり)だけ、フロアを(ある)いている。

よかった。(おに)(づか)さんじゃない。
前回(ぜんかい)は、あいつに()つかったのが、(うん)()きだったからな。

ほっと(むね)をなでおろしたのも(つか)()(あおい)(あたま)に、警報(けいほう)()(ひび)いた。
おい、()て。どんどん(ちか)づいて()るぞ。
(しか)られるのか?

大丈夫(だいじょうぶ)かい? その(すべ)(だい)、そんなに(こわ)かった?」
「……へ?」
(ほとけ)仏崎(ほとけざき)さんである。(やわ)らかな()調(ちょう)()いかけてきた。
(なに)やってるんだ」などと、(おに)のように(あたま)ごなしには()ない。

だが、福々(ふくぶく)しい(いろ)(じろ)(かお)は、(いま)(おも)いっきり(ゆが)んでいた。
どう()ても、()()したいのを()(ころ)している様子(ようす)だ。

そうか! (おれ)(おも)いっきり(さけ)んじゃってた!

「いえ! あの! 大丈夫(だいじょうぶ)です!」
(かお)から()()た。()()()だ。
(あおい)は、(あわ)てて()()がろうとした。

(かたわ)らの(あかつき)も、素早(すばや)(あおい)(なら)う。
とっとと()()した(ほう)がいいと、歴戦(れきせん)のカンが()げている。

だが。
「う、わっ……ととと」
(あかつき)は、よろけて(こえ)()げた。

すとん
(よこ)で、(あおい)もマットに(すわ)()んでしまう。

()てないのだ。
(からだ)が、ダイレクトにダメージを()けていた。
もう無事(ぶじ)なんだと、(あたま)では()かっている。
でも、(こし)()たない。

大丈夫(だいじょうぶ)かあ?」
いつの()にか、(よう)(ふた)()見下(みお)ろしていた。
心配(しんぱい)そうな(かお)だ。

どうして、すんなり()てるんだよ。
(あおい)が、非難(ひなん)めいた()(よう)()()げた。
本当(ほんとう)に、こいつは、わけがわからない。

「あははは! なんか()てないや!」
()てないのは一緒(いっしょ)だが、(あかつき)(ほが)らかに(わら)っている。
()とうと(こころ)みては、ぐしゃりとマットに(しず)んでいた。
まるで、下手(へた)くそなマリオネットの(まい)だ。
傍目(はため)には、ふざけているとしか()えない。

だが、ツッコんでいる余裕(よゆう)はない。(あおい)も、()ち上がろうと奮闘(ふんとう)した。
()つん()いになると、慎重(しんちょう)()(はな)して、上体(じょうたい)()こす。

ゆっくり、ゆっくり。
(あし)が、プルプルしている。
こっちは、()まれたての()鹿(じか)()っちだ。

二人(ふたり)(なら)ぶと、異様(いよう)さが(ばい)(ぞう)だった。

なんだ? この()たちは。
(ほとけ)(ざき)(けい)()(いん)表情(ひょうじょう)が、次第(しだい)(くも)ってきた。
おかしくないか?
幼児用(ようじよう)(すべ)(だい)で、こんな、()てないほどになるなんて……。

まずい!
察知(さっち)した(あおい)が、素早(すばや)(よう)()(かい)()した。
(はや)く、退散(たいさん)しよう。
うん、面倒(めんどう)なことになりそうだ。

「あの、大丈夫(だいじょうぶ)です。すごーく(つか)れてるんです、(おれ)たち」
(うそ)ではない。()(わけ)しながら、(あおい)(たい)(りょく)気力(きりょく)()(しぼ)った。
よかった、なんとか()てた。

(よう)が、よろよろしている(あおい)から、すかさずバッグを(うば)う。
ついでに(ころ)がっている(あかつき)(ぶん)(ひろ)()げると、(くび)にぶら()げた。合計(ごうけい)3つだ。

(おれ)が、こいつら(おく)っていきますから」
一点(いってん)(くも)りもない笑顔(えがお)を、警備員(けいびいん)()ける。

すっ
(よう)は、(まよ)いなく(あかつき)(たす)()こすと、がっしりと(こし)をホールドした。
反対側(はんたいがわ)(かた)に、(あおい)(すが)りつく。

あっという()に、三人(さんにん)(ある)()した。
ただし、まともに(うご)いているのは、(よう)(あし)だけだ。
二人三脚(ににんさんきゃく)ならぬ、(さん)(にん)()(きゃく)である。

見過(みす)ごすのも()がかりだ。
(ほとけ)(ざき)さんは、(ほとけ)(ごころ)(こえ)()けた。
「……ええと、あの、(なに)かあったのかな?」

ぎくり
()ろうとしていた(みっ)つの()(なか)が、強張(こわば)った。
()(なか)(おお)きな()が、()(かえ)る。
「えっ、いや、あの……」

うわ、だめ。
(あかつき)が、ぎゅっと()()じた。
(よう)(うそ)がつけないのだ。

「いえ、なにもありません。()くぞ、(よう)
(あおい)が、きっぱり(さえぎ)った。()()(しま)もない。

警備員(けいびいん)さんの視線(しせん)(いた)いほど(かん)じながら、なんとか(さん)(にん)(げん)(かん)まで到達(とうたつ)した。
ひとえに、(よう)膂力(りょりょく)のお(かげ)だ。

ぽーん
(おと)()てて、ドアが(ひら)いた。玄関(げんかん)フードを(すす)むと、(おもて)(とびら)自動(じどう)(ひら)く。
全員(ぜんいん)、しみじみ(おも)った。
自動(じどう)ドアって、なんて有難(ありがた)いんだろう。

(そと)は、薄暗(うすぐら)くなっていた。
(あき)()は、つるべ()としだ。すぐに()(くら)になる。(はや)(かえ)ったほうがいい。

ひんやりとした外気(がいき)のおかげで、(あおい)()(だい)にしゃっきりしてきた。

「あのなあ、(よう)(ねん)のため()っとくけど、今日(きょう)のこと、(ひと)には(はな)すなよ」
(よう)(かお)に、疑問(ぎもん)()かび()がってくる。

(くち)(ひら)かせずに、ぴしゃりと(あおい)(そく)(とう)した。
「うん、(おや)にもだ。だって、心配(しんぱい)させちゃうだろ」

そうか、わかった。でも、自信(じしん)がないなあ。
(うそ)をつけって()ってるわけじゃないだろ。ただ、余計(よけい)なことは()わずに(だま)ってろって」
けんけんと(あおい)()(つの)る。
(すべ)て、(よう)(こと)()にする(まえ)(ふう)じている。

「どうしたの、(よう)?」
反対側(はんたいがわ)から、(あかつき)(こえ)をかけた。
なんだか、さっきから(ある)(かた)(へん)だ。

(わる)い。(おれ)、トイレ()りてくる。二人(ふたり)とも、ここで(すわ)ってて」
コンビニエンスストアの(まえ)だ。
(あおい)(あかつき)(いり)(ぐち)のベンチに()ろすと、(よう)(すみ)やかに店内(てんない)()えた。
バッグは、(みっ)つとも(くび)()げたままだ。

(あおい)が、()まずそうな(かお)()(おく)った。
「あ~……我慢(がまん)してたのか。()づかなかった。(わる)いことしたな」

「でも、(あおい)(しん)(ぱい)してるんでしょ」
(となり)(すわ)った(あかつき)が、(やさ)しい()みで()りなす。

「うん。無自覚(むじかく)で、ぽろっと(はな)しちゃいそうでさ」
絶対(ぜったい)、まともには()()られない(はなし)だ。
妄想(もうそう)(きょ)(げん)(へき)。ほら()き。
()られるレッテルが、(やま)ほど(そう)(てい)できる。

「そうだね、(よう)だもんね……」
は~
ベンチに(すわ)った(ふた)()は、(そろ)って(ため)(いき)をついた。
前途(ぜんと)多難(たなん)だ。

応援よろしくお願いします!

にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村 ファンタジー・SF小説ランキング
ファンタジー・SF小説ランキング

免責事項・著作権について リンクについて