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30.業火
昭和のテレビ局は、商魂たくましかった。
川沿いのビルから、闘うネコミミ達の姿をもらさず撮っていたのである。
ちさとに、世の男どもが歓喜したのは言うまでもない。
さらに、絶世の美少年を救い出した少年の登場。しかも同じ顔立ち、ときた。
桃色の歓声が、日本のあちこちで響き渡った。
だが、渦中のネコミミ達は、それどころではない。
「うわ~っ! 千里が二人いる?!」
和尚が、わめきつつ登場した。
裃が、かなりヨレヨレだ。相当、酷使してきた様子である。
びゃん! びゃん! びゃん!
本人の姿より先に、シルキングの矢が飛んで来た。全て的中だ。
ちさとは、反撃してくる蛟の胴を躱しながら、猛スピードで飛んで来た。
「状況を! 簡潔に! 説明して!」
矢を放つ合間に、千里たちを問い質す。
すごい迫力だ。
黒猫のお姉さんに叱られて、白猫ツインズの耳が揃ってうなだれた。
「双子なんだ。こいつは万里。オレの弟だ」
「助けに来たんだ。黙ってて、ごめん」
しおらしく謝られては、それ以上厳しく言えない和尚である。
おっさんの方が叱られん坊の顔をして応えた。
「よぉし分かった!」
荒魂は待っちゃくれない。
四人全員、うねうね襲ってくる胴体から逃げ、さらに攻撃しながらの会話である。
「こっちの方が手ごわいわね」
ちさとのライダースーツが、男子の声でそう唸った。ニゴちゃんだ。
攻撃は、二名増えている。
しかも、シルキング最新機×2だ。
万里は、クサナギを手裏剣に変化させた。
真っ白な十字の剣尖が、くるくる飛んでいく。
目にも止まらぬ連投だ。命中率も高い。
だが、蛟は一向に弱る気配が無い。
「こりゃ、目にカイコン嵌める隙もねえなあ」
ぼやく和尚に、ちさとが急接近してきた。
こんな状況で、信じられないくらい艶やかな笑みだ。思わず目を奪われてしまう。
だが、赤い唇から零れ出たのは、悪魔より物騒なセリフだった。
「策があるけど、乗る? 命の保証はないけど」
一瞬、虚を突かれた。
だが、和尚の図太さも相当である。
すぐに食えない笑みを浮かべた。
「お、いいねえ。乗った。やってやろうじゃん」
胸元で、ゼロちゃんの目が、やれやれと呆れた。
「お話は最後まで聞いてから、ですよ、和尚」
要は、蛟をしっかりと拘束できればいい。
和尚のシルキング縄は、うってつけだ。
だが、ぬるぬるした表皮のせいで、すぐにすっぽ抜けてしまう。
「噛み殺されそうになった時に、喉の奥が見通せたのよ」
ちさとの度胸も、並ではない。
「がらんどう、だった。あれなら、中を通れるわ、きっと」
「正気の沙汰じゃないですよ、まったく」
ゼロちゃんが、白い縄を吐きながら、愚痴も吐く。
和尚は、飛びながら、おヘソの辺りから生えてきた縄を手に持った。
この位置から出してもらうのが、一番扱いやすい。
結局、よく分かっている相棒なのだ。
満面の笑みで、和尚はきっぱりと言った。
「ああ。やばくなったら、とっとと逃げちまおうぜ!」
言ってるだけじゃない。本気である。
和尚ゼロ組は、隅田川に舞い戻った。
蛟の、もう一方の頭が、ぐったりと水面に浮かんでいる。さっきと同じ状態だ。
眉間には、ちさとの矢がぶっ刺さったままだ。
和尚は、そろりと近づいた。
いきなり復活されたら、一巻の終わりだ。
用心しいしい、ぐるりと上顎に縄を回しかけた。先っちょを、額の矢に縛り付ける。
きゅううっ
ゼロちゃんが、巻き付けた縄を短くする。
ぱかり
大蛇の口が開いた。
「んじゃ、行きますか」
念のため蛇の顔を見た和尚は、しばし言葉を失った。
ぽろぽろぽろ……
泣いている、蛟が。
後から後から、おにぎり大ほどもある涙の粒が落ちて来る。
左の目からだ。
見開いた真っ赤な瞳には、よく見ると勾玉巴の筋が入っている。
例の、鏡を出した右目も同じ模様である。
だが、こちらは泣いていない。虚ろに開いているばかりだ。
「……そうだよな、お前さんだって辛いよな」
荒魂がどんなものであれ、矢で射られたり刺されたりなんて、されたくない筈だ。
「もうすぐ、楽にしてやるからな」
ぽんぽん、と和尚は大蛇の頭を撫でた。
ここまで来たら、最後までやり抜くしかない。
シルキング縄が、自分の命綱になる。
先っちょは、額の矢に縛りつけたまま。
ヘソの辺りから生えていた位置を、後ろの腰に回してもらって、準備は完了だ。
「行っくぜえ~っ!」
「はい、和尚!」
どす黒い筒の奥が、徐々に赤く染まっているのが見えて来た。




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