ダンジョンズA 〔3〕嘆きの湖 (なげきのみずうみ)

8.嘆きの湖(なげきのみずうみ)(2)

当サイトは広告を利用しています プライバシーポリシー   

8.なげきのみずうみ(2)

「まあ、あとで案内板(あんないばん)()いてみよう」
(よう)が、あっさり()った。(あかつき)(うなず)く。
「そうだね。(わす)(もの)(あず)かり(じょ)とか、あるかもしれないよ」
()(きゅう)にかよ」
()んだ()でツッコむ(あおい)だった。
(わす)(もの)かよ。しかも、バッグまるごとだ。

(おれ)連絡帳(れんらくちょう)には、小学(しょうがく)一年生(いちねんせい)からこの(かた)(わす)(もの)って単語(たんご)()かれてないっていうのに……!」
「すごいよね!」
(わす)(もの)キングの(あかつき)が、(こころ)から()めた。
「さすが(あおい)だよなあ」
(よう)も、のんびりと(たた)える。

(もも)だけが、()(どく)そうな(かお)(なぐさ)めた。
(あおい)学校(がっこう)じゃないんだから、連絡帳(れんらくちょう)には()かなくていいんだし。この場合(ばあい)は、しかたないと(おも)う。()にしないで」
一番(いちばん)、まっとうなフォローだ。

()たせたな。()わったぞ。ん、どうした、(あおい)? (かお)黄昏(たそがれ)てるぞ」
ド・ジョーの(こえ)がした。
いつの()にか、極細(ごくぼそ)ミニサイズの水柱(みずばしら)()(のぼ)っていた。
黄金(おうごん)ドジョウのステージ(だい)である。

「ド・ジョー。ここには、案内板(あんないばん)なんて()いよね……」
(あおい)が、絶望的(ぜつぼうてき)(おも)いで()(ただ)した。
見渡(みわた)(かぎ)り、(みずうみ)だ。
(かがみ)なんて、どこにもありゃしない。
エレベーターには、案内板(あんないばん)があった。
だけど、たった(いま)()ってしまったところだ。

「いや、あるぞ」
予想外(よそうがい)(こた)えが(かえ)って()た。
「え? あるんだ」

しかし、ド・ジョーの(かお)が、(ふたた)(ゆが)んだ。
「だけどな、さっきのを()ただろう。どうにも、(すい)(みゃく)(くる)っていやがる。これじゃ、起動(きどう)しねえ」

水脈(すいみゃく)? ()っけたエレベーターが(かたむ)いたのも、そのせいだったの?」
(あかつき)(くび)(かし)げる。
ド・ジョーが(うなず)いた。

「そうだ。時間(じかん)()つにつれて、どうしたって水脈(すいみゃく)(みだ)れてくる。だから、時々(ときどき)メンテナンスが必要(ひつよう)なのさ。お(まえ)さんらには、とっとと(かえ)って()しいんだが、まずは案内板(あんないばん)(なお)さねえと」

「あらん。この()たちに手伝(てつだ)ってもらえば、いいじゃない」
マダム・チュウ+999は、(あかつき)(かた)から急滑降(きゅうかっこう)した。
(ちい)さなカバンから、(なに)()()して、(くば)(はじ)める。
「はいは~い。じゃ、一人(ひとり)一本(いっぽん)ね」

「なに、これ?」
細長(ほそなが)いペンだ。

手渡(てわた)された(もの)(こと)よりも(さき)に、(あおい)(たず)ねた。
「どうでもいいけどさ、マダム・チュウ+999。そのカバン、なに。なんで、体内(たいない)ポケットに()まっておかないわけ?」
ピンク(いろ)の、可愛(かわい)いポシェットだ。
いつから、してるんだ?

「いやあねえ、(あおい)は。()かってないんだから。おしゃれよ、お・しゃ・れ! バッグとかの小物(こもの)で、()をつけるのよん」
「ふ~ん」
くるくる、(わた)されたペンを()(こう)(まわ)しながら、(あおい)(なま)返事(へんじ)した。
ほんとに、どうでもいいな。

(まえ)に、バラバラにどっかいっちまって、大騒(おおさわ)ぎしたからな。太平洋(たいへいよう)()っことした(つま)(よう)()(さが)すようなもんだった。だからカバンに()れてんだろ」
ド・ジョーは、()(ふた)もない。

(だま)れ、(かた)()(たまご)()(ろう)
(かん)(ぱつ)()れずに、野太(のぶと)(こえ)(かえ)した。
オネエ言葉(ことば)()けたマダム・チュウ+999は、迫力(はくりょく)満点(まんてん)である。

バチバチバチ
両者(りょうしゃ)(あいだ)に、火花(ひばな)()った。

(かた)()でって。ああ、ハードボイルドか」
なるほど。
意味(いみ)理解(りかい)できた(あおい)は、(おも)わず()()した。

「ああ?」
ギロン
水柱(みずばしら)(うえ)()ったドジョウが、(あおい)殺気(さっき)()ばしてくる。
マダム・チュウ+999も、ご機嫌(きげん)(うるわ)しくない様子(ようす)だ。
これは、まずい。

()け! (よう)
(あおい)は、(よう)(うで)(つか)んで()()せると、自分(じぶん)(たて)にした。

「え? よく()からないけど、」
いきなり()()された(よう)は、戸惑(とまど)いながらも(くち)(ひら)いた。
(けっ)してお世辞(せじ)ではなく、いつだって本心(ほんしん)から()める(おとこ)()()()(よう)
(たい)オネエネズミ最終(さいしゅう)兵器(へいき)が、発動(はつどう)した。

「かわいいと(おも)うなあ」
きらきらきら
笑顔(えがお)がまぶしい。ただし、(たん)なる地顔(じがお)だ。

「んま~っ!」
いちころである。
マダム・チュウ+999は、()をハート(がた)にして、()()がった。

「もう! (よう)ったら、正直者(しょうじきもの)ねえ」
一撃(いちげき)で、すっかりご機嫌(きげん)だ。
「よし!」
(よう)(うし)ろで、(あおい)(ちい)さくガッツポーズをした。

「あ。これ、ボタンかな?」
一切(いっさい)空気(くうき)()まずに、(あかつき)(わた)されたペンをいじくっていた。
()った(とき)には、(すで)にボタンを()してしまっている。

バシュ!!!!
ペン(さき)から、光線(こうせん)(ほとばし)った。

「きゃっ」
(もも)が、悲鳴(ひめい)()げる。
一緒(いっしょ)(あかつき)手元(てもと)(のぞ)()んでいたのだが、()める()もなかった。

「うおっ」
ド・ジョーが、のけぞって(かわ)した。
間一髪(かんいっぱつ)だ。
光線(こうせん)は、(するど)(おと)(とも)に、(みず)(なか)()えた。

「あらあら~。(ひと)()けて()っちゃダメよ、(あかつき)()いてあるでしょ」
ざまあみろ、と()こえるのは(おれ)だけか?
(あおい)が、(あわ)ててペンを(たし)かめる。
つい、(くせ)で、ペン(まわ)しなんてしちゃったぞ。

「ちょっと、マダム・チュウ+999。どこに()いてあるんだよ?」
「ここよ、ここ」
(ほそ)いペンの(じく)を、ピンクネズミが(ゆび)さす。

本当(ほんとう)だ。
(ぼう)人間(にんげん)のイラストに、それに()かった()(じるし)
その(した)に、バツ(じるし)()いてある。
(こめ)(つぶ)アート状態(じょうたい)だ。これで()かれというか。

本当(ほんとう)だ。ごめんね、ド・ジョー」
それでも、(あかつき)素直(すなお)(あやま)った。
(こころ)から()まながっているのが(つた)わる。

ハードボイルドなドジョウも、(あかつき)には(よわ)い。
()かったよ。ああもう、とっとと(はじ)めるぞ!」
()うなり、ド・ジョーは水中(すいちゅう)()()んだ。

ぴゅうっ……
ほどなく、()こうで水柱(みずばしら)()がった。
(ほそ)い。一本(いっぽん)だけだ。
でも、(いきお)いよく天井(てんじょう)目指(めざ)して()()がる。
位置(いち)は、ほぼ(みずうみ)中心(ちゅうしん)だ。

くるくる
今度(こんど)は、(まわ)()した。
水鉄砲(みずでっぽう)銃口(じゅうこう)を、時計(とけい)(まわ)りに回転(かいてん)させているような様子(ようす)だ。
二本(にほん)三本(さんぼん)……。どんどん()えていく。
へろへろと(まわ)噴水(ふんすい)になった。

地下(ちか)空間(くうかん)壁面(へきめん)は、ぐるりと(みずうみ)(かこ)んでいる。
中心(ちゅうしん)から()()(みず)は、まんべんなく(かべ)上部(じょうぶ)()()けられた。
一斉(いっせい)(かべ)(つた)って、(なが)()ちていく。
(あら)(なが)しているような(あん)(ばい)だ。

(あた)りが、徐々(じょじょ)(くら)くなった。
(おび)えて()()(もも)に、(よう)()(つな)いでやって、説明(せつめい)する。
()えるか? (かべ)に、(ちい)さな(いし)()まってる。びっしりだ。それが、(ひか)ってたんだ。(みず)()れたせいなのかな。()えていってる」

「メンテナンスモードにしてるのよ。もうちょっと()っててね~ん」
マダム・チュウ+999が()った直後(ちょくご)

ぱあああっ
(うえ)から(じゅん)に、(いし)(いろ)づいていった。
(たん)なる()かりから、カラーの()いた(ひかり)へと()わったのだ。

メインは、若々(わかわか)しい緑色(みどりいろ)だった。
茶色(ちゃいろ)(おお)い。
そして、黄色味(きいろみ)(つよ)(いし)が、ばらばらと()じる。派手(はで)(あか)(あらわ)れた。

ちらほら、カラーにならず、(ひか)りもしないままの小石(こいし)がある。
だが、(ちか)づかない(かぎ)り、判別(はんべつ)しにくい。
ここから()えているのは、(よう)くらいなものだ。

やがて、(かべ)(すべ)(いろ)づいた。
四人(よにん)は、ただ(こえ)(うしな)って、自分(じぶん)たちを()(かこ)壁面(へきめん)見渡(みわた)した。

長大(ちょうだい)絵画(かいが)が、(えが)()されていた。
(あき)(むか)え、(あか)(いろ)づいていく、(もみ)()()れの。

間仕切り線

んでくださって、有難ありがとうございます!
いかがだったでしょうか。
以下のサイトあてに感想かんそう評価ひょうか・スキなどをおいただけましたら、とてもうれしいです。

ロゴ画像がぞうからかくサイトの著者ちょしゃページへと移動いどうします

ランキングサイトにも参加さんかしています。
クリックすると応援おうえんになります。どうぞよろしくおねがいします↓

小説全しょうせつすべての目次もくじページへ

免責事項・著作権について リンクについて