ダンジョンズA 〔3〕嘆きの湖 (なげきのみずうみ)

9.マッチョ・スワンズ(2)

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9.マッチョ・スワンズ(2)

スワンズは、子どもたちりやすいように移動いどうしてくれた。1を先頭せんとうに、四羽よんわ縦列駐車じゅうれつちゅうしゃする。

ぎろり
っている四人よにんを、巨大きょだいうながした。
さあれ。

そうはいっても、あらためて、でかい。
小山こやまほどある。

っていいの? 白鳥はくちょうさん」
だが、物怖ものおじするあかつきではなかった。
はきはきたずねねる。
こくり
ながくびが、四羽揃よんわそろってたてうごいた。

「あ! そうだ! あのね、わたしあかつき!」
自己紹介じこしょうかいわすれていた。
にこにこわらって名乗なのる。百点満点ひゃくてんまんてん笑顔えがおだ。

はい、つぎ。とばかりに、あかつきあおい見遣みやった。
やれやれ。
あおいです」
それでも、生真面目きまじめにお辞儀じぎするあおいだ。
こちらは、金賞きんしょうものの礼儀正れいぎただしさである。

おれは、三ツ矢陽みつやよう。で、こっちはいもうと
ようは、のんびりとした声音こわね名乗なのった。
こいつは、どんな相手あいてたいしても、マイペースをつらぬくタイプである。

すっ
あにが、ももかたした。
特大とくだいスワンが、雁首がんくびそろえている。
こわい……。
でも、こんな場面ばめんでは、両親りょうしんあにも、けっして自分じぶんあまやかさない。

三ツ矢桃みつやもも、です。よろしくおねがいします」
くようなこえしかなかった。
だが、これで精一杯せいいっぱいだ。
かなかっただけでも、上出来じょうできだとおもう。

マッチョ・スワンズにも、もも必死ひっしさはつたわったらしい。
ほんのすこしだが、眼差まなざしがやわらかくなった。
こくり
四羽よんわくびが、同時どうじうなずいた。

首輪くびわくらになっている。そのうえれ」
リーダーの白鳥はくちょうが、指示しじした。
「わかった」
ようが、ももげた。
よいしょ。一番後いちばんうしろの黒鳥こくちょうっけてやる。

なるほど、くらだ。ふと首輪くびわうしろは、くるりとがっていた。すわったおしりが、そこでまるようになっている。

手前側てまえがわには、ふたつ、ドーナツみたいなっかがいていた。われるまえから、ももが、しっかりと両手りょうてにぎりしめる。
かお強張こわばっていた。相当そうとうこわそうだ。

「あのさあ、できるだけ、ゆっくりってくれるか? ももは、はやいの得意とくいじゃないから」
にいちゃんが、黒鳥こくちょうたのんだ。

4の首輪くびわをしたスワンが、返事へんじをした。
押忍オス!」
イエスもハローもOKも、全部ぜんぶこれだ。
万能ばんのう言葉ことばである。

っくよー!」
そこに、たからかなこえがった。あかつきだ。
助走じょそうけて、白鳥はくちょうびつく。
いや、ほとんど体当たいあたりをかました状態じょうたいだ。

「ふっ」
だが、1の首輪くびわをしたリーダーは、不敵ふてきわらった。
うつくしい羽毛うもうしたには、きたえぬいた筋肉きんにくがあるのだ。この程度ていどで、らぐものか。

羽毛うもうかべいたあかつきは、がむしゃらによじのぼってった。
つかまれたしろはねが、むしりられて、無残むざん湖面こめんへとちていく。

だが、マッチョ・スワンズ1ごうは、表情ひょうじょうくずさなかった。
ちいささく「う」とか「い」とかうめこえれていたが、根性こんじょう我慢がまんしたらしい。

成功せいこうだ。あかつきも、きちんとくらおさまった。
大丈夫だいじょうぶだよ。あおいりなよ~」
ぶんぶんとってうながす。

あおいは、あごてて、まだすくんでいた。
きっと、どうやってるかを慎重しんちょう検討けんとうしているのだろう。

すると、しろつばさが、しろ小島こじまきしされた。タラップのようだ。
のぼってけばいいのかな。
あおいが、そうおもった瞬間しゅんかん

ばさっ
いとも簡単かんたんに、あおいからだちゅうっていた。
白鳥はくちょうほうげたのだ。
「うわああああっ!」

どさっ
おとてて、あおい着地ちゃくちした。
おそおそける。ちょうどくらうえだ。

「ナ、ナイスコントロール」
あおいが、白鳥はくちょうめた。
きたえてるって、こういうことか。

押忍オス
2の首輪くびわをした白鳥はくちょうは、みじか返事へんじした。
その称賛しょうさんを、わたしつつしんでおけします。
画面下がめんした意訳いやくのテロップをながすとしたら、そんなぶんになるだろう。

見守みまもっていたようは、ほっとむねでおろした。
あとは、自分じぶんだけだ。
3の首輪くびわをした白鳥はくちょうに、小走こばしりでちかづいた。
すっとひろげてくれたつばさに、左足ひだりあしける。

たんっ!
ようからだは、綺麗きれいんでいた。
白鳥はくちょうまたがると、ばしてつかむ。

総員そういん騎乗完了きじょうかんりょうである。
スワンたちは、湖面こめんすべるようにおよした。

「あ、そうだ」
ようが、っている白鳥はくちょうはなしかけた。
おれだけおもたくって、ごめんな」
押忍オス!」
気遣きづかいなく。大丈夫だいじょうぶです。

「よし、各自かくじ自分じぶん担当区域たんとうくいきってくれ。このまえ途中とちゅうまではメンテナンスしたからな。今日きょうは、そのつづきのブロックから、かってくれよ」
先頭せんとう水柱みずばしらうえから、ド・ジョーが指令しれいくだした。

押忍オス!」
マッチョ・スワンズは、散開さんかいした。

あおい白鳥はくちょうは、そのまま直進ちょくしんした。
もも黒鳥こくちょうは、方向転換ほうこうてんかんして、ゆっくりと反対はんたいおよいでく。
ようあかつきは、左右さゆうはなれた。
四羽よんわが、ちょうど十字じゅうじかれた格好かっこうだ。

あおいは、くらうえで、ポケットからペンをした。準備じゅんびしておこう。

「レーザーポインター」ってってたよな。
それならっている。あかひかりるペンだ。
スクリーンを使つかった授業じゅぎょうときに、先生せんせいが「ここですよ」ってしめすのに使つかうやつ。

だが、これは、そんな生易なまやさしいものじゃない。
さっきの威力いりょくからして、ほぼ凶器きょうきだ。
慎重しんちょうかなくちゃ。

「えっと、これが発射はっしゃボタン、だよな」
「ええ、そうよ。よこいてるちいさな突起とっきがあるでしょう?」
「ああ、これ?」
「そうそう。それで威力いりょく調整ちょうせいができるの。マックスだとつよすぎるから、なかぐらいで充分じゅうぶんよ」
「ふ~ん。かった」
ちょっとて。おれだれ会話かいわをしている?

あおいは、自分じぶんかたた。
フードからしているネズミと、った。外見がいけんは、かわいいピンクいろだ。

「……あのさ、マダム・チュウ+999」
きょとん、としたかおかえされた。
ヒゲが、ぴくぴくうごいている。

「……いや……なんでもない」
なんでおれのフードにはいってる。
そういたい。
だが、どうにもいだせなくなってしまった。

だまっているマダム・チュウ+999プラススリーナインは、小さなネズミだ。いや、しゃべってもネズミなのだが。
小動物しょうどうぶつをいじめる趣味しゅみは、欠片かけらわせていない。

ましてや、親切しんせつおしえてくれようとしている相手あいてに、無碍むげ台詞セリフけるわけがなかった。

一体いったい、いつからおれのフードはネズミのになったんだろう?
は~
溜息ためいきあおいに、マダム・チュウ+999は、さくさく説明せつめいつづけた。

暁達あかつきたちには、ってるスワンが、やりかたおしえるから大丈夫だいじょうぶよ。ほら、あの右上みぎうえて。あそこ、ひかってないわよ。まずはかるくボタンをして、」

「こう?」
すると、あかひかりせんが、ペンさきから放射ほうしゃされた。
これだけだと、普通ふつうのレーザーポインターである。

ピンクネズミがうなずいた。
フードからて、あおいかたがる。
がって、ちいさなゆびかべした。

「そのひかりを、あのいし固定こていするの」
「うん。っと、こうかな」
「そうよん。で、ボタンを最後さいごまでつよむ!」

バシュッ
するどおとともに、光線こうせんほとばしった。

カツン! ころころころ……
命中めいちゅうだ。
小石こいしは、かべからがれちた。
壁面へきめんころげて、ぽちゃんと水没すいぼつする。

「オッケー。上出来じょうできよ、あおい
返事へんじい。
マダム・チュウ+999は、かたからして、あおいかおのぞんだ。
眼鏡めがねおくが、見開みひらかれている。

ざわざわ
ざわざわ

壁面へきめんから、ちいさいおとひびいていた。
なにかが、集団しゅうだんで、ざわめいているようなおとだ。

いまている光景こうけいが、しんじられない。
碧は、呆然と呟いた。

いしが、うごいてる……」

あないた場所ばしょに、まわりのいしが、おとててっていくのだ。

たちまちに、隙間すきままった。

ざわざわ
ざわざわ

ちがう。ここだけじゃない。
あおいは、あわてて地底湖ちていこ空間くうかん見回みまわした。
あちこちからこえてくる。さんざめくいしたちのこえが。

まるで、かぜふるえるように。
紅葉もみじが、うごいていた。

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