ダンジョンズA 〔3〕嘆きの湖 (なげきのみずうみ)

18.ラストチャンス(1)

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18.ラストチャンス(1)

()(ろう)()(ろう)マッスル()()(もん)!」
マッチョ・スワンズのリーダーが、黒鳥(こくちょう)()びかけた。(なが)名前(なまえ)なので、早口(はやくち)でだ。

黒鳥(こくちょう)も、早口(はやくち)()う。
「みんな、援護(えんご)して。(もも)()()けられない」
本当(ほんとう)だ。(もも)は、(かた)()をつぶって、首輪(くびわ)にしがみ()いている。
()んでいるスワンに()っているだけで、精一杯(せいいっぱい)なのだろう。

()()!」
二郎(じろう)三郎(さぶろう)が、了解(りょうかい)した。

黒鳥(こくちょう)さんの左下(ひだりした)()って、一郎(いちろう)さん!」
(あかつき)が、()っている白鳥(はくちょう)(たの)む。
「おう!」
(きん)(にく)一郎(いちろう)は、減速(げんそく)しながら(ちか)づいた。
黒鳥(こくちょう)のスピードは、かなり、ゆっくりだ。
(もも)気遣(きづか)っているのだろう。

(あかつき)は、(おお)きな(こえ)()びかけた。
(もも)ちゃん。()()じたままでいいから、ゆっくりと(まえ)(かが)んでみて。そうしたら、黒鳥(こくちょう)さんの(くび)に、両腕(りょううで)(まわ)すの。やってみて」

(もも)(のど)からは、すすり()くような(こえ)しか()てこなかった。
だが、(あかつき)には(つた)わった。
だめ。むり。できない。こわい。

「ゆっくりでいいよ。()ってるから」
ああ、(あかつき)だ。()ざした(もも)(まぶた)に、にこにこ(わら)姿(すがた)()かんだ。
(あかつき)は、(けい)()(ちゅう)も、よくこの(せり)()(くち)にする。
そして、こう()(かえ)すのだ。
(あせ)らなくていいよ」

ゆっくり、ゆっくり。
(もも)は、(からだ)()()げた。
右手(みぎて)(くび)(まわ)す。そして、左手(ひだりて)も。

ふわふわの羽毛(うもう)が、(かお)()れた。
ほっとした。うん、できた。大丈夫(だいじょうぶ)

そうこうしている(あいだ)も、(まわ)りでは(はげ)しい(たたか)いが()(ひろ)げられていた。
フィルムが、次々(つぎつぎ)(した)から(おそ)()かってくる。
(もも)(あかつき)()(なか)(まも)って、(あおい)(よう)白鳥(はくちょう)が、ぐるぐると()ぶ。

べしっ
(あおい)白鳥(はくちょう)が、フィルムを(はた)()とした。
「ふんっ!」
(よう)は、バーベルを(やり)のように(あつか)って、()()らす。戦国(せんごく)武将(ぶしょう)さながらだ。

「ん?」
筋肉(きんにく)二郎(じろう)が、気付(きづ)いた。
こちら目掛(めが)けて(おそ)ってきたフィルムが、途中(とちゅう)で、うろうろと(もど)って()ったのだ。
ああ(ちが)った、とでもいうように。

そうか。(あかつき)判別(はんべつ)がつかないのだな。
(おな)じような()格好(かっこう)だし、スワンも(しろ)だ。
(あかつき)はティアラをしているが、(ちい)さくて目印(めじるし)になるほどではない。

(あおい)攪乱(かくらん)するぞ」
白鳥(はくちょう)がニヤリと(わら)うのを、(あおい)(はじ)めて()た。

筋肉(きんにく)二郎(じろう)は、わざと黒鳥(こくちょう)(そば)をうろちょろ()(はじ)めた。
()(たい)だ。みかげのフィルム手足(てあし)は、まんまと(ほん)(ろう)された。

(くわ)えて、主力(しゅりょく)攻撃(こうげき)熾烈(しれつ)(きわ)めた。
ド・ジョーが、(じゅう)(おう)()(じん)水柱(すいちゅう)(あやつ)る。
それに同乗(どうじょう)したマダム・チュウ(プラス)(スリー)(ナイ)()が、バーベルを連投(れんとう)するのだ。

「オラオラオラァ!」
まるっきり、オネエの仮面(かめん)()がれ()ちている。だが、(だれ)一人(ひとり)(わら)余裕(よゆう)なんてない。

「はい、(よう)、ど・う・ぞ。うふん」
攻撃(こうげき)合間(あいま)に、(よう)(ほう)()げてしまったバーベルも、いそいそと回収(かいしゅう)しては手渡(てわた)している。
一番(いちばん)(てき)(まわ)してはいけない()()が、このピンクネズミだ。

(もも)ちゃん。左手(ひだりて)を、(すこ)しだけ()ろしてみて」
(あかつき)が、黒鳥(こくちょう)(した)()いて(うなが)した。
(もも)()(ふる)えている。だが、黒鳥(こくちょう)(くび)(まわ)した左手(ひだりて)(ゆび)が、(すこ)しだけ()いた。

(あかつき)が、白鳥(はくちょう)(あん)(じょう)から()()がった。
レーザーポインターを、(もも)左手(ひだりて)()()もうと頑張(がんば)る。
一郎(いちろう)四郎五郎(しろうごろう)マッスル()衛門(えもん)は、()ばたきのリズムを()わせて、可能(かのう)(かぎ)接近(せっきん)した。
一郎(いちろう)(たず)ねる。
「いけるか? (あかつき)
「ん~っ。あと、もうちょっと!」

ぴゅるるるるっ!
「しまった!」
(あおい)二郎(じろう)が、同時(どうじ)(さけ)んだ。

ひときわ(ほそ)(おび)が、バーベル攻撃(こうげき)をかいくぐって、(いな)(ずま)のように(はし)ったのだ。
(あかつき)()から(ちい)さなペンを(うば)()ると、くるくると(まる)まりながら(もど)って()く。
カメレオンの(した)、さながらだ。

(あかつき)(さけ)んだ。
「あーっ。()られちゃった!」

「あ~」
一斉(いっせい)に、がっかりした(こえ)がスワンズと(とう)(じょう)(しゃ)(たち)から()がった。

キキキキキ!
みかげが、あざ(わら)う。
熱帯(ねったい)のジャングルで()こえてきそうな、野獣(やじゅう)(こう)(しょう)だ。

「しかたがない。仕切(しき)(なお)しだ」
リーダーが、いち(はや)()()(なお)した。
マッチョ・スワンズは、綺麗(きれい)なV()隊列(たいれつ)()んだ。(あかつき)先頭(せんとう)に、(みずうみ)上空(じょうくう)を大きく(せん)(かい)する。

「みんな、ごめんね。せっかく上手(うま)くいってたのに」
(あかつき)が、()(かえ)って(あやま)った。
(もも)をみじんも()めたりしない。

「いや、しかたないよ。こっちも防御(ぼうぎょ)しきれなかったし」
(あおい)本心(ほんしん)から()う。

それが(もう)(わけ)なくて、(もも)黒鳥(こくちょう)鞍上(あんじょう)(ちぢ)こまった。
ちゃんと()(ひら)いて、みんなの(かお)()(あやま)りたい。でも、それすらできないなんて。
「ごめん……。ほんと、ごめんなさい」

()をつむったまま、(つぶや)くように謝罪(しゃざい)する(もも)に、(ゆう)(じん)(かい)のメンバーは(こえ)(そろ)えた。
大丈夫(だいじょうぶ)! (つぎ)()めよう!」

(はる)(した)に、みかげの本体(ほんたい)()えた。
(みずうみ)中央(ちゅうおう)に、ふらふらと(そび)()っている。
攻撃(こうげき)()んでいた。
(かえ)るのを(ぼう)(がい)する意思(いし)はあっても、危害(きがい)(くわ)える()()いらしい。

「やっぱり、レーザーポインターだと(ちい)さすぎたかなあ」
(よう)が、ぼやいた。反省(はんせい)しきりだ。

「あらん。(よう)(わる)くないわ」
マダム・チュウ+999が、(なぐさ)めた。
ネズミとドジョウは、ひょろひょろ()びた水柱(すいちゅう)()っかっている。
細長(ほそなが)竜巻(たつまき)が、スワンの()っかけをしているような(あん)(ばい)だ。

何事(なにごと)も、やってみなくちゃ()からないわよ。はい、バーベル」
(ちい)さな片手(かたて)で、軽々(かるがる)(よう)にバーベルを手渡(てわた)す。

(となり)のド・ジョーは、げんなりした表情(ひょうじょう)だ。
「おい、ネズミの(おく)さんよ。ちょっと()りろ。(おれ)視界(しかい)から、そのピンク(いろ)を、いっとき()してくれ。()がチカチカして(かな)わねえ」

()(どく)に。高速(こうそく)(うご)(まわ)るピンクネズミによる、(がん)(せい)()(ろう)だ。

「あらん。失礼(しつれい)ねえ」
そう()いながらも、マダム・チュウ+999は、ぴょんとジャンプした。(あおい)のフードに()()む。

「ちょっとお、マダム・チュウ+999!」
「あ~。ふわふわで気持(きも)ちいいわあ。(ひと)(やす)み、(ひと)(やす)みっと」
「……まったくもう」
ぶつぶつ()いながらも、(あおい)(なに)もしない。
なんだかんだ()って、すっかり()らされてしまっている。

(よう)が、いきなり()()した。
「そうだ。(おお)きい(ほう)が、みかげに()られにくいんじゃないか? バーベルは、どうだろう」
(よこ)()(あおい)に、ひょいと()げて寄越(よこ)した。
さっき(たたか)ってた(とき)(もの)より、(ちい)さめサイズだ。
「う~ん、どうかなあ」

ずしり
「うわっ」
(あおい)~!」
(おも)い。(からだ)ごと()っていかれた。そのまま()っこちそうになる(あおい)に、全員(ぜんいん)(あわ)てて(さけ)ぶ。

ほとんど意地(いじ)で、(あおい)体勢(たいせい)()(なお)した。
()ぬかと(おも)った。
(よう)とネズミは、片手(かたて)()ってたじゃないか。
「……無理(むり)だよ、(おも)すぎる。これ、(もも)ちゃんが片手(かたて)()てると(おも)うか?」
自分(じぶん)()てないとは、()んでも()いたくない(あおい)である。

「そうかあ。じゃあ、(べつ)(もの)にしよう。(なに)がいいかなあ」
(かんが)()んだ(よう)に、(あおい)は、なんとかバーベルを(かえ)した。大切(たいせつ)武器(ぶき)だ。
(よう)は、なんの造作(ぞうさ)もなく、片手(かたて)()()る。

ピロピロリン
可愛(かわい)らしいチャイム(おん)が、(うえ)から()ってきた。

『3(かい)のトライに失敗(しっぱい)しました。(みずうみ)恩恵(おんけい)は、もう()けられません。(つぎ)のトライで最後(さいご)となります』

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