別離(オフィーリアsideA)~ルドン「オフィーリア」より~

『名画の詩集』

別離(オフィーリアside A)

~ルドン「オフィーリア」より~

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Odilon Redon Ophelia 1900/1905

おひさま色の金鳳花(きんぽうげ)
同じくらい眩しかった
幼い日の笑顔

陽の光を浴び
透き通った水だけを与えられて
(けが)れを知らずに大人になった
純白の雛菊(ひなぎく)

誇らしかった
ただ愛しかった
思い描いた幸せな絵の中で
いつまでも笑っていると思っていた

花は枯れると
なぜ人は気付けないのだろう
別れの日が決まっていないだけなのに

認めたくなくて 逸らした鼻先に
(あか)芥子(けし)を突き付けられて
ようやく死の香りを嗅ぐのだ

ああ 花を
もっと花を手向(たむ)けてくれ
私の愛すべき妹
優しい記憶の花びらだけが
別離の傷を覆い (いや)

だが (ひそ)んだ勿忘(わすれな)(ぐさ)
いつしかイラクサに変じて
我が身を縛るだろう

「私を忘れないで」

後悔は伸び続け やがて喉を締めて
悲しみの叫びをも封じるだろう

誰かが 何かが
貞淑(ていしゅく)な乙女を死に追いやったのだ

無自覚な犯人達は
認めずに生き延びている
今も

私も 奴らと同じか……
沈黙の沼に沈み
お前の最期の顔を
心の水辺に浮かべて
ただ賛美し続ける

さらば
優しき娘
(うるわ)しの(きみ)
我らの
(かぐわ)しい五月の薔薇(ばら)

シェイクスピア四大悲劇の一つ、「ハムレット」。
オフィーリアは、ハムレットの美しい婚約者。ですが、彼の偽りの乱心に戸惑い、そうこうしているうちに父親をハムレットに殺され、ついに狂気に捕らわれてしまいます。
結局、狂ったまま、小川に落ちて溺死。自殺か事故かは、不明。

ひどいなあ。
男に翻弄され、死に追いやられる儚い乙女。
そそられるモチーフだったのでしょう。色んな画家が「オフィーリア」を描いています。

中でも、ルドンの描いたオフィーリアは、どこか抽象画のようです。
目を閉じた顔は、お人形みたい。
ルドンは、「オフィーリア」という一人の女性を描くつもりはなかった。
心に抱いている「美しい理想の女性像」というイメージを表したのでは。

ということで、今回の詩を書きました。
By オフィーリアの兄、レイアティーズ(シスコン)
こちらがsideAです。

sideBは、Byオフィーリア本人(激白)。

ちなみに、ミレイの画に描かれている花には、それぞれ意味が込められています。
sideBの方には、その花言葉を載せておきましたので、ぜひ見てみて下さいね。
ちなみに、sideAの元ネタは、そちらから取っています。

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別離(べつり)(オフィーリアside A)
~ルドン「オフィーリア」より~

おひさま(いろ)金鳳花(きんぽうげ)
(おな)じくらい(まぶ)しかった
(おさな)()笑顔(えがお)

()(ひかり)()
()(とお)った(みず)だけを(あた)えられて
(けが)れを()らずに大人(おとな)になった
純白(じゅんぱく)雛菊(ひなぎく)

(ほこ)らしかった
ただ(いと)しかった
(おも)(えが)いた(しあわ)せな()(なか)
いつまでも(わら)っていると(おも)っていた

(はな)()れると
なぜ(ひと)気付(きづ)けないのだろう
(わか)れの()()まっていないだけなのに

(みと)めたくなくて ()らした鼻先(はなさき)
(あか)芥子(けし)()()けられて
ようやく()(かお)りを()ぐのだ

ああ (はな)
もっと(はな)手向(たむ)けてくれ
(わたし)(あい)すべき(いもうと)
(やさ)しい記憶(きおく)(はな)びらだけが
別離(べつり)(きず)(おお)い (いや)

だが (ひそ)んだ勿忘(わすれな)(ぐさ)
いつしかイラクサに(へん)じて
()()(しば)るだろう

(わたし)(わす)れないで」

後悔(こうかい)()(つづ)け やがて(のど)()めて
(かな)しみの(さけ)びをも(ふう)じるだろう

(だれ)かが (なに)かが
貞淑(ていしゅく)乙女(おとめ)()()いやったのだ

無自覚(むじかく)犯人(はんにん)(たち)
(みと)めずに()()びている
(いま)

(わたし)も (やつ)らと(おな)じか……
沈黙(ちんもく)(ぬま)(しず)
(まえ)最期(さいご)(かお)
(こころ)水辺(みずべ)()かべて
ただ賛美(さんび)(つづ)ける

さらば
(やさ)しき(むすめ)
(うるわ)しの(きみ)
(われ)らの
(かぐわ)しい五月(ごがつ)薔薇(ばら)

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